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母の外出/日記覚書

主治医と面談後、初の外出訓練。

痴呆は回復することは、現在は不可能。が、薬によって進行を遅らせることは可能。

薬及び家族の声かけ、刺激、そうした力が、大きな作用を果たすであろうと医師は言う。

外科的治療と内科的治療は、ほぼ終了。持病に対しての常備薬は必須だが、手術後の状態良し。

父は脳、母は心臓。

二人とも、いつ果てても可笑しくない大病を持っている。

今年のお盆は何とか共に迎えることが出来そうだ。嬉しい誤算w

もしかしたら、お正月も・・かしら。

道中、車窓に映る景色を母は黙って観ていた。

「お母さん、退院したら、もっと体力ついたら、向日葵見に行こうか」

「今年は紫陽花を見れなくて残念だったわね」

「お父さんが待ってるわよ。昨日から興奮してたの。お母さんに会えることが夢みたいだって、

まるで小学生の遠足前状態よ。眠れないってね。」

片道30分は、母には辛かったようだ。猛暑の嫌がらせも大きい。

何を語りかけても、母は言葉を発しない。

ただ、外を観ていた。

そんな母が、父の顔観た瞬間・・

「オトウサン!○○子です!帰って来ましたよ」って、声にした。

「おお、おお!(涙とよだれ・・父は脳出血の後遺症で顔も麻痺しているのだ。伊達男だったのに、

自分のよだれにも鼻水にも気がつかない〉

帰ったか~!待ち長かったぞ!死ぬ前は、俺の傍に居てくれ!」

看護師さん達も笑って噂にしてる程、この高齢夫婦は、熱い!

リアルを認識出来ない母と、同じく、脳の重要箇所を損傷した父の恋、夢物語。

延々と父が語る。言葉を流暢に発せるのが不思議というか奇跡に近いリハビリ効果。

言語の医師も驚かれていたのが、もう二年前・・

「必要は発明の母ですね!あ、違ったかしら 」なんて、綺麗な女医さん。父のお気に入りでした。

別れ際が何と言っても大変だった。

母は淡々と・・(に見える。何を考えているのか、実は悲しんでいるのかも知れない。〉

父は号泣、のち「返さん!もう○○子は此処から病院には帰らんでいい!連れて行くな!分かったか!」

いえ・・分かりますけどわかりません。無理ですってば。

ヘルパーさんが来る時間を待ち、何とか、引き離す。

「さ、おむつ替えましょうね。お父さん、良かったわね、お母さん、もうすぐ帰りますよ。はい、ポータブルに行きましょう♪」と、そこは父の性格を知って下さる彼女が、上手に柔らかい声のトーンで、気を逸らす。

卑怯・・かも知れないが、ポータブルに腰おろした父は、もう何も出来ない。

自分で立つことも座ることも出来ないのだから。

母に似合う派手な赤いサマードレスを買い着せ・・髪には帽子を被せ

その姿を

「お前は若いときと変わらんのぅ・・・全然、変わらん。赤が似合う。帽子もいいのぅ」と

お尻出したまま、父が感嘆の声挙げる。

母はニッコリして手を振る。

僅か半日の外出訓練、夫婦の別れ終了。

その夜、反動で、大変だった。

○子~○○子~~

昼間は、此処に居た!一緒に食べた!顔が観たい!!

泣きじゃくる父。

私には常に尊大で傲慢で、威張ってるのにな(苦笑

まぁ、妻を愛すること、父母の睦まじさは、麗しいことではある。

退院後のケアプランを、ケアマネさんと相談する段階に来た。

着実に迫る母の退院。

猛暑・・今年は半端じゃないわ。連日36℃前後・・・

私の体温より高いじゃないのさ!

・・・と、真夜中過ぎの、ぼやき。。

さ・・頑張ろう!

明日も明後日も、今まで同様に。

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