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覚書:満月


私の好きな満月だ。

外は仄かに明るく、多分、街灯が無ければもっと、月の恩寵たる光を

体感、感謝出来ように。。。

昔から、月には兎が居ると信じてて

科学的に、現実が解明されようと、そんなことは、どうだっていい。

私は、肉眼で視る月の模様に、

兎を感じるのだから。

雲はただ風に乗って動くだけ。

分かっていても、その動きに、形の変移に、感動する。

夏の雲は、もくもくと力強く、形を変えれば、父の表情になり

それは、威風堂々たる父の姿、畏怖する父の形と重なる。

月みて笑う私が居て

月みて泣く私が居て

大陽に焼き尽くされたいと願う私が居る

夜は優しく、時に、残酷だ。

雑多な昼は、心身共に酷使され、煩わしさと騒音、それらが

私の哀愁を葬ってさえくれる

私の愛するモノは、三日月を好きだと言い

満月を好む私を、゛らしい”と笑う

母が週末退院。

多忙な中に、それでも母を待つ父の心を喜び、淡々と準備を整えて来た

突然、母の容態変化と病院より連絡あり。

退院延期かと思いきや

所謂、社会的入院もどき、高齢者を抱えるその病院は、治療が出来ないと言う。

そのまま転院をと、頼むが、それも叶わない。

猛暑の中、新たな病巣抱えた母を退院させ、来週初めに、専門医のいらっしゃる病院に受診、おそらく入院となるだろう。

母の命の終焉が、現実に見えてきたこと、思わず、その痛みが、私を強烈に襲った


数日まえに、母のように呆けたくないと願った罰だろうか。

母の天真爛漫さ、童女の笑みは、

続くと思ったからこその、哀しさ、苛立ちだったのか。

母よ、もう無理ですか。

父は、貴女を愛し焦がれ泣いています。

母よ、醜く泣いた事のない貴女は、健康な時、

私にほほえみを見せませんでしたね。

やっと、本心からほほえみ、私に甘える貴女を、それでも嬉しく思っていたのだと

突如、知りました

もう頑張れませんか

父が貴女の愛する男性の姿、状態でなくなってから、急激に貴女は弱りましたね

悲しかったのですか

嫌だったのですか

雄々しく傲岸で、常に伊達男で、

そんな父だからこそ、ついてこれたのですか

涎を垂らし、おむつを必要とし、颯爽と歩けなくなった男は

貴女にとって、正視出来ない異形でありましょうか

それでも

貴女は、子を愛するより、ずっと夫を待ち焦がれ愛したのではなかったか

何故・・夫の涎を汚いと嘆きますか


子を愛せなくとも

夫を愛したのではなかったですか

何故・・もう少し踏ん張れませんか

私を認識出来ずとも、父に

「○○子です!お父さん、もうすぐ帰りますよ。」と

驚くほど、しっかりと明朗に力強く、告げたではないですか

何もかも忘れていいのです

私が、貴女の娘だなんて、知らなくともよいのです

生きて下さい

頑張って下さい

 弱っちくなってるのは私だわ

 月があまりに綺麗で、

それに比べて、人はこんなにも愚かで弱々しくて

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