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らいおんになりたかったねこ

「僕はいつか立派なライオンになる!」

ぼよん

昨日の猫集会で雉猫のポヨンは宣言した。


みゃははは~。ふぎゃ~。にゃひゃひゃ。
皆が皆、お腹を抱えて僕を笑った。


一番の親友だと思ってたクロまで笑った。
その名のとおり艶やかな黒の短毛に金色の目。僕と正反対の彼は凛凛しくて

僕の憧れだった。

いつか皆の前で「僕は絶対に犬になる」って口走って以来、皆から

「へいへい、ポチ」って呼ばれるようになった。


大人達の頭は岩みたいに固い。


長老猫のサスケ翁は
「のう、猫としてのプライドを持たんかい。
犬になるとはもってのほかじゃ」と怒り


「犬なんて自尊心のかけらもない」「猫の恥さらし!」

仲間達にも口々に罵られ、クロは落ち込みモードだったけど、僕だけは彼を誇らしく思った。


「なれるよ。猫がただ猫であればいいなんて誰が決めた?

自由なんだ。なりたいものになれるさ。クロなら絶対になれるよ。犬になっても仲良しだよね。」


「おお!犬になったら僕は他の犬からポヨンだけは守るよ」


なのに、なのに・・・そのクロが卑しい顔で笑ったのを僕は見てしまったんだ。


「なぁ、ポヨン。無理なんだって。俺子供だったから分からなかったんだよ。」


・・・・・・あぁ・・クロ!クロ!


長老のサスケ翁は憐れむように長い長い説教と訓話を始めた。


「のお、ポヨン。なれないものを求めてどうなるのじゃ。あるべき現実を見るのじゃ。

猫として如何に生きるか、それが次世代を担う者の課題じゃ。自覚を持つんじゃ」


僕の愛するララ。

ふわふわ白い柔らかい髪が夜風に揺れ、愛くるしい青い目が心配そうに僕を見ていた。
集会後、ララは僕の傍に寄り添い囁いた。
「私はポヨンの事信じるわ。」


らら

「本当に?」
「ええ、だって・・もうすぐ私達のベビーが生まれるのよ。」
えぇ~~!!
何て凄いタイミング。ララ、君は素晴らしいよ。

ぼよんとらら


「ポヨンは私の王子様よ。あ、ベビーが生まれたら私だけの王子様じゃなくって家族の王様ね。

その縞模様もふさふさの尻尾も大好き、でも何より素敵なのはその勇気よ。ポヨンはライオンにだってきっとなれる!」
そういって彼女は僕の鼻先におでこをぶっつけて笑った。
・・ああ、優しいララ。君こそ僕のお姫様さ。


僕はライオンになる!君を守る為に。


うちのテレビでいつかライオンの家族が映ってたんだ。そしたらお父さんがポツンと呟いたんだよ。

何だか寂しい顔で―


「ああ、ポヨン。お父さんも昔はライオンだったんだよ。ずっとずっと昔にね。

貴方は私のライオンさんって、奥さんに呼ばれたものさ。そんな時代もあったんだ。」


人間だって!! 人間だって !!ライオンになれるんだよ!?


何だ~。それなら僕らのほうがずっと簡単じゃないか。元から尻尾だって肉球だって、全部揃ってる。

一番の違いはサイズと声さ。腕力やスピードなんて訓練次第さ。
毎日ポヨンは喉が枯れるまで発声練習した。


二年たち、ポヨンは二匹の子猫に恵まれテレビで見たライオン家族の様に幸福だったけど、

まだ声はミャオ~のまま。

家族

春 ぽかぽか眠い昼下がりもポヨンは筋肉強化に特訓。夜は夜で家族を守り寝ずの番。
夏 流れ者の強持ての猫を相手に実践。まだまだポヨンは力及ばず、傷だらけ。
秋は落ち葉に身を潜め狩りの練習。ネズミくらいで満足しちゃいけないぞ。
冬 長い毛がライオンみたいにポヨンの顔を蔽い、少しだけ嬉しい気分。

訓練


でも変わらぬ猫サイズ。猫の声。
時々落ち込みかけたポヨンの視界にはいつだってララの優しい顔。大丈夫よ、と語るその目。


三年、五年、やがて十年の時が流れ―
年老いたララ。何も映さなくなった青い目でポヨンに微笑んだ。

「サヨウナラ。もうお別れの時が来たわ。」

ららの眼差し



らら最期
らら最期

「ごめんよ、ごめんよ。とうとうライオンになれなくてごめんよ!」。
「ううん。貴方はね、最初から私のライオンだったの。ずっとずっと・・・ね」

ぽよんの号泣


ぎゃおおおお~~~~~ん!うお~~~!」 


ポヨンはララを抱きしめ、初めてライオンの声で泣いていた。

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