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②応募の巻

日曜日のランチは目の回るような忙しさだ。家族連れやカップルなど多くのお客さんで賑わう。コロナが始まった頃は営業すらできないこともあった。そう思うとお店が営業できるということは何とありがたいことだろう。

今日の日替わりランチは、

『シチリア産レモンとスモークサーモンのパスタ』

シチリア産のレモンはエグみが少なく酸味に丸みがあるのが特徴だ。軽めに仕上げたクリームソースにノルウェー産のスモークサーモンを合わせてある。仕上げにディルとブラックペッパーで完成だ。

「ケンタがつくる料理は相変わらず旨そうだな」

そんなことを考えていたら電話鳴った。

「お電話ありがとうございます。イル・グラッツェ・ミーレでございます。」

「お忙しいところすみません。そちらで働かせていただきたいのですが、募集はされていたっしゃいますか?」

「ご応募ありがとうございます。まずはお名前からお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「ナオミと申します。歳は26歳です。」

僕は心の中でガッツポーズをした。コロナで離職があったため人員の補充を考えていたところだったからだ。

面接の段取りをして電話を切ったあとで料理長のケンタに声をかける。

「いま応募の電話があって来週面接することになったよ。」

「OK牧場!」

僕は面接の日時を手帳に書き込んだ。


その日の夜、帰宅した僕は・・・

「今日はスタッフの応募の電話があったんだ、それでね・・・」

妻のヒロコにその日あったことの話をしながら一緒に晩酌をするのが僕の日課だ。

今日は白ワインのヴィニエティザブ グリッロ。グリッロはシチリアの代表的な白ぶどうの品種で、香り高く酸味のきいた爽やかな果実味のワインに仕上がる。これは 値段もお手頃でテーブルワインとして申し分ない。

「ランチタイムの忙しい時の電話だったから、バタバタして電話番号聞くの忘れちゃった」

「そっか、応募があって良かったわね。忙しい時の電話って慌てちゃうよね~。そんな時はこんな風にしたらいいんじゃないかな?」

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📜応募電話の虎の巻

最近ではWebサイトからの応募が増えてきましたが、まだまだお店に直接電話をかけてくる方はいらっしゃいます。しかもだいたい忙しい時に限って電話が鳴ります。予約の電話もそうですよね。

「このクソ忙しい時に電話かけてくんじゃねーよ」という喋り方は間違いなく相手に伝わります。伝わってしまうと面接当日、時間になっても姿を現さず連絡も取れないという事態に陥ります。相手の表情が見えないからこそ丁寧で落ち着いた話し方が肝心です。

・名前

・年齢

・連絡先

・週に何回くらいの出勤希望か

・出勤できる時間帯

・面接にお越しいただけそうな日時

足りていない時間帯と合致していれば面接の日時を決め、当日の持ち物を伝えます。

僕は電話での質問は最小限にして、面接の際に詳細を聞くようにしています。電話だとどうしてもお互いに伝わりづらい部分があって誤解が生じる可能性があることと、あとは当日来てからのお楽しみにしたいから(笑)

何か質問はあるかとお店の場所を知っているかどうかを確認して、「当日は気をつけてお越しくださいね。お待ちしております!」で切ります。

中には初めてアルバイトに応募する人もいるでしょう。相手に「なんかいい人そうだな」と思ってもらえるように、丁寧かつ穏やかに話しましょう。仮に面接が不採用になったとしてもお客さんになる可能性だって全然あるので。

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