「光る君へ」のための平安準備情報⑩

前回が大変暑苦しかったので、

今回はライトに。
平安時代の女性のたしなみ(?)など書いてみたいと思います。

楽器は弾けるといい!

まず女性のたしなみは楽器です。
楽器とは具体的に「琴」「琵琶」などの「絃」を使った楽器です。
吹く楽器は扱いません。
(ちなみに雅楽で使う「笙」を始めた方から、ものすごい腹筋、肺活量が必要で、始めてから体重は5キロ近く減り、お腹は割れた、平安時代の女性にはとてもムリ。と教えてもらいました。説得力!)
「琴」といっても、「琴(きん)の琴(こと)」「和琴(わごん)」「箏(そう)の琴(こと)」があり、現代の私達がイメージするのは「箏の琴」です。当時も「箏の琴」が一般的で、「和琴」を弾ける人は「通」というかんじだったようです。「琴の琴」は特殊な楽器で、皇族の血を引く人々など高貴な人々しか扱えない楽器でした(『源氏物語』はその傾向が特に顕著です)。
「琴の琴」は物理的に技術面でも難しかったようで、『源氏物語』の時代には既に実際には弾かれなくなっていたようです。

字はうまいといい!

これは現代にもいえることでしょうか。
「仮名」を上手に書けることが求められました。
字のつながりや配置など見栄えも重視されます。
そのためには「手習」=練習もしました。
字が上手な人にお手本を書いてもらい、それで練習していました。

歌はたくさん覚えてたらいい!

歌を詠んだり、知的な会話をする(アウトプット)にはインプットが必要。
ということで、有名な歌を記憶しておく必要があったようです。
『枕草子』には、『古今和歌集』1100首を暗記していた妃の話も載っています。

歌は上手に早く詠めたらいい!

歌を知ったら、アウトプットの技術も必要。
そのときの気持ちや様子にぴたりとあう歌を詠む必要があります。
歌を詠みかけられたら、その言葉や内容を踏まえながら
なる早で返歌しないといけません。

センスのよい会話ができたらいい!

和歌や漢文等に由来する故事を知り、それを巧みに会話に織り込む。
織り込まれたときに気づけるようにする。
しかもそれは直接全部言うのではなく、「匂わせ」。
まさに当意即妙。

お香は調合できたらいい!

当時の人々は自分好みの香りを調合し、衣服などにたきしめていました。
香りでその人とわかるくらい。
その香りの調合法には由緒正しいものなどもあり、それを知識教養として知ったうえで、さらに、微妙なバランスや使用用途にあわせてブレンドできるセンスが必要でした。

このあたりまでは、女性だけではなく男性にも求められるものでもあります。でも以下は女性特有のものです。

染色はセンスよくできたらいい!

衣服の染色もできる必要があったようです。『源氏物語』の紫の上は、

  かかる筋、はた、いとすぐれて、世になき色あひ、にほひを染めつけた  
  まへば、ありがたしと思ひきこえたまふ。
   (新編日本古典文学全集『源氏物語』「玉鬘」3ー134頁)

と記されます。かかる筋は染色のこと、めずらしい色合いなどで染め付けることができたので、光源氏は紫の上を得がたい人だと思ったとあります。
光源氏は正月の晴れ着を自分の妻たちに配りますが、その手配をしたのも紫の上でした。
染色ができる上に、夫の他の妻たちの衣服の面倒も見る。。大変すぎる…。

縫い物は早くできたらいい!

『蜻蛉日記』には、夫が他の女に通い、自分のところには全然訪れないにもかかわらず、縫い物だけを頼んでよこす場面があります。
  
  古き新しきと、ひとくだりづつひき包みて、「これせさせたまへ」とて  
  はあるものか。見るに目くるるここちぞする。
     (新編日本古典文学全集『蜻蛉日記』上巻110頁)

「あるものか」という響きに、こんなんことある?という怒りがにじみ出たうえに、「目くるるここち」は怒りで目のくらむ思いがするという描写です。それでも縫わないわけにはいかないところに、蜻蛉日記の作者、藤原道綱母の立場の弱さもにじみ出ます。

出産の介添えはできたらいい!

個人的には最もムリ…と思うのがこの出産の介添えです。
『うつほ物語』には、主人公仲忠の妻(帝のお嬢さんです)の出産時に、その介助をするその母の様子が描かれています。
帝のお嬢さんの母ですから帝の妻…
妃でありながら出産の介添えをする…
その知識経験はどうやって?!?!と思いますが、逆に素人だろうとなんだろうと出産の介助をしなくてはいけない状況であったということなのかもしれません。
髪を耳にかける、という今では一般的な行為が、当時はとても行儀の悪い行為でした。しかし、この出産の介添えにあたった人々は高貴ではあっても髪を耳にかける様子が描かれており、どれだけ必死だったかがわかります。

うーん。こうして書いてみると…大変すぎませんか?平安人…




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