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音楽: 出来ることを突き詰めれば個性になるをD.R.I.から学ぶ

世の中には色んな才能を持った人が居る。
早く走る等の記録を目指した才能は明確に現状の己の実力に成績がつくが、楽器の演奏や文章を書く等の芸術の分野に関しては一概に上手ければ良いもんではない。
上手い人は素人からすれば雲の上の存在だけど、上手い人は五万といる。
ではこの五万といる上手い人は皆成功しているのかというと、多くのバンドを見ている限りそうとは思えない。
思ったより売れずにメジャーレーベルから契約を打ち切られインディーズレーベルに以降したアーティストは沢山居る。

メタルの歴史を紐解くと、あるジャンルが盛り上がると雨の後の筍の様に似たり寄ったりのバンドが沢山登場してきた。
そのどれもが演奏は上手だし、デビューを果たしている以上は一定数の評価をレーベル側は下していたはず。
でも売り出してみると思ったほど集客出来なくて終わってしまう。

ではどういったアーティストが生き残ったのかというと、解の一つが個性を出せていたかだと思う。
上手を目指すというのは、冒頭で書いた記録を目指すに近い。
こちらを目指すと成績で判断されてしまうので淘汰されるのは自然の流れ。
でも個性に関しては下手でも発揮出来る。
むしろ出来ることが限られている下手の方が出来ることを突き詰めるしかないので個性へ転換し易い。

この真髄が詰まったバンドがD.R.I.だ。
僕はこのバンドの最初の作品Dirty Rotten EP/LP を聴いた時に衝撃を受けた。
演奏だけに限ってみれば冗談抜きで下手くそで、近くの学校の軽音部の方がよっぽど上手いだろう。

難しい演奏が出来ないからシンプルなリフで勝負するしか無かった。
高額な器材や著名なプロデューサーの力を借りれないからチープな音質になった。
でもそれらを自覚しているからこそ彼等は速さを突き詰めた。
その結果、下手くそな演奏は彼らが作り出した曲と融合を果たして誰にも真似出来ない唯一無二のアルバムに仕上がった。

多分、大多数の人はこのアルバムを聴いたらゴミと評価を下すだろう。
でも僕はこのアルバムをゴミだなんて思わない。
僕はこのアルバムの研ぎ澄まされた曲達が大好きだし、下手くそだけど演奏に無駄は一切感じない。

バンドはこの後に演奏力が向上してメジャーな存在となっていくので、一般的には後年の方が人気が有るのかもしれない。
でも僕にはこの時の彼等の作品こそが一番だ。

上手いから何だ?
上手いだけのやつなんぞ掃いて捨てるほど居るわ。
そんな上辺だけの上手いやつの作品と比較して落ち込んで自分の作品を発表するのが怖い?
それならこんな下手くそなアルバムを恥ずかしげもなく世に送り出した彼等は恥か?

そんな事は無いよ。
その時の全力を注ぎ込んだ作品が恥な訳がない。
誰も評価しない?
ちゃんと表現する奴は居る!

ならば僕たちに求められるものは何だ?
売れてるやつを真似してみるのか?
阿呆か、そんなヤツは淘汰されるのをメタル好きならば嫌というほど分かっているだろう。

やるは一時の恥やらぬは一生の後悔。
どんな作品にも力を注いだならばそれは恥ずべきではない。
評価がつかない?
勝手に自分の作品を自分で評価すんな!
評価するのは良くも悪くも他人だ。
僕達は自分の好きを突き詰めてやりたいことをやれば良い。
作った作品を世に出したら、後は凧揚げのようなもんでどう飛ぶかなんて分からない。
分からないからこそそんなものに悩むのは無駄だ。
飛びたいように作品は勝手に飛んでくれるよ。

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