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【詩】勤めて通う

朝、
櫻蔭の女子高生が定理のページに
ため息を漏らし
膝の見えるダメージジーンズの娘
妊婦の隣に座る
焼け過ぎソーセージのインスタで笑えば
欲望のスニーカーで歩き回るサニーサイド
ためにも膨らました乳房と赤ん坊と
そこには透けない丸い時間が
女の一生のようにそろっている

エンジェルパイのエンジェルを崇拝する
役にも立たない御託ごたくを並べ
室内プールの白波のごとき
立ち上がる空間で走る電車道に
行方不明の額縁を探し回る
雨の音も行方不明
何ごとも成し得ない男は
日々働くのみ

すると
溜まり出した水は
すぐさま膝の高さを超え
さぞかし娘は冷たかろう
あれよあれよの間に
男を女を
再度赤ん坊を
飲み込んだ

この光さす
楽園のような空間に
痛々しい望みをかかえたわたしは
子宮の内側の襞々ひだひだをみる

次の駅で降りようとしている人の
身体のこわばりが伝播した時
覚醒のエンジェルは
タイムスタンプの押される音を
遠くかすかに聞くだろう

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