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剣道を文化として残すために

僕は竹屋流剣道具師の父のもとに生まれ、剣道と剣道具作りが身近にある環境の中で育ってきた。そして大学卒業後、父のあとを追い剣道具作りの道に入った。それももうすぐ25年になろうとしている。

僕にとって「剣道」とは、「人生を共に歩む価値のある素晴らしい文化」である。剣道が全てではないが、「剣道」「剣道具作り」を通じて学んだ事が、僕の人生に彩りを与え、僕の日本人としてのアイデンティティを形成する上で大きな要素であった。

僕にとってはかけがえのない文化である剣道であるが、時代の流れと共に変質してしまっている気がする。時を経ることにより変化することは必然であるが、文化と呼ばれるものが変質してはいけないと考えている。競技化や元々あったものを良く検証せずにおこなわれた変更が、剣道の文化としての魅力を損なってしまった。

そこで僕が考える剣道復興の方法は「剣道を文化として考える」ことである。

剣道が戦後の禁止期間を経て復活した時は、剣道家は大きな志を持って「剣道の復興」に向かっていったと思う。それがいつの間にか普及発展というお題目と競技化のための変質・剣道家のためだけの剣道のために、剣道家以外の人々には分かり難くルーツの日本刀からも遠ざかる特殊な世界になってしまった。そして文化としての存在がどんどんと失われていったと感じている。

剣道は本来、剣道自体が文化でありそこに多くの日本文化が含まれていたのである。

剣道衣・袴は和装の1つであり、また和装の所作の入門ともなる。剣道衣・袴の藍染は日本が誇る染色技術である。剣道具には藍染の紺反の他に、武道具用に加工された鹿革・牛革、胴台の漆塗り、具足から応用された仕立て技術と日本の文化といえる職人技術が多く使われている。もちろんルーツである日本刀は世界に誇る文化である。

多くの日本文化に支えられて形成された剣道だが、残念ながらその剣道を支えてきた日本文化が衰退の一途を辿っている。このままでは競技としての剣道しか残らないのではと危惧している。

そうならない為にも、剣道を支えてきた日本文化を見直し、技術を保護・継承の道筋を作り、剣道をやらない人にも誇ってもらえる様な剣道文化を形成していかなければならない。

新しいことも素晴らしいが、元々あったものの価値を見直し、大事に育み、後世に伝えていく、それができたらもっと豊かな国になるのではないか。

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