見出し画像

祖母の施設での思い出

祖母の施設で一番思い出深い利用者さんがいます。
姉妹で入所されている姉のKさん。

私が施設に遊びに行き、他の利用者さんと話しているとKさんは横にちょこんと座って、私の会話が終わるのを待っています。
話が終わると私の手を握り『可愛いねぇ、良い子だねぇ』とニコニコしながらいつもほめてくれます。

別の日には施設に遊びに行くとすぐに私を迎えに来てくれ、手をつなぎながら中庭を散歩します。
そうすると他の男性利用者さんが「おいKさん、見たことない坊主連れてきて、若い彼氏か」と私たちに向かって一言。
私は、(こないだ会ったのにめっちゃ忘れられてるじゃん)と思いつつも会釈。
Kさんは「そう、私の彼氏。今日はみんなに自慢しにきたの」といい、私の方をみて「ねっ」と一言。
私は正直苦笑いしか出来ませんでしたが。そんな空間が好きでしたし、Kさんとのやりとりが新鮮でした。

しかし、夜になると妹のSさんとKさんの部屋から怒鳴り声。
Sさん「私をこんなところに閉じ込めてどういうつもり!」
Kさん「開けて~開けて~」
特に鍵をかけていたわけではないのですが、自分で開けることができず、また祖母からは「夜はみんな少し変わるから開けちゃダメ」と言われていたのでドア越しに会話をするしかありません。(一応祖母には許可をもらって対応しました)

私「Sさん、Kさんどうしたの?大丈夫?」
K「お願い、ここ開けてくれない?」
S「あんた誰!開けなさい!」
私「鍵はかかってないから、自分で開けれるよ?」
S「開かないじゃない!開けなさい!」
スライドドアの居室だったのですが、二人は引いてしまうため、なかなか開けられません。ますます、ヒートアップしていきます。
職員さんは他の利用者さんを対応しているため、私はその職員さんが戻ってくるまで、ドア越しに会話を続けました。

しかし、小学生で素人の私が話しかけても、落ち着くわけもなく、最終的には職員さんが来てくれ、二人はすぐに落ち着いてベッドへ戻っていきました。

日中のKさんと違って会話も続かないし、私のことも声だけなので理解していない様子。でも、私はそんな状態にも関わらず、いつか私が声をかけただけで落ち着くようにできないだろうかと思い。
祖母の施設に遊びに行くたびに、他の利用者と会話しつつ、Kさんとのコミュニケーションの時間を多くとるようになりました。

残念なことに私が中学生になるとともに、祖母の施設に行く頻度もすくなくなってしまったので、私の目標は達成することはありませんでしたが、認知症の方を理解しようと思った一番最初の出来事でした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?