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77歳でSexするには結婚しよう -2

 少し無口になって、料理を追加している。今の言葉は腹に力が必要だったのかな。
グイと飲んでやったら喜ぶだろうな。
「もっこりって男のブラジャーかも知れないですね」
 再提示に少し考えている。
「確かに女はちょっと走ればゆさゆさして大変だと思うけど、男は要らないよ」
「タヌキじゃないし?」
「かーぜに浮かれてプーラプラって?」
 浮かれて?  ?? 
「楽しいタヌキだね」
「まあ、タヌキはドンファンだからね」
 本当に浮かれてと思っているようだ。恥は他で掻いてもらうことにして放っておこう。彼の計算機は会話の方には向いていないようだ。
頃合いと踏んだのか、住所教えて、別々に出よう、と秘密に囁く。
やれやれ日陰の女か。男は外の女に最初は秘術を尽くすから女もいい気になるけど長くは続かない。
マンネリになったら別れるよ、なんて先に言っておきたい。
別れ際に面倒を防ぐには良いかも知れないけど、言えるかどうか、それが問題だ。
奥さんとのマンネリ期間はやり過ごせたんじゃない、なんてことも言ってやりたい、
手切れ金を出すかな、報償金だね。
急に気になったように店内をグルっと見回している。
大丈夫ですよ、私が知っている人は居ない、即ち会社の人は居ない。
だけどあなたは結構楽しそうで、見る人には下心が見え見えかも、でも夜の時間なんてそんなものだから誰も気にしない。彼も大丈夫と踏んだようだ。
久しぶりの獲物なんだね。
しかも手近で従順そうだし、ひっそりと貞操堅そうだし、と幸運を想い閉めているのかな。
一方で30女が堅物であるわけないと男は言う。
まあ女も男を見るし、男が見る女も正しいのだろう。
おでこの辺りで時間を逆算されるのは興ざめだけど、源氏物語の人達は時間を気にしたのかなと、突然思う。夜中でも月の運行で分かったのかな。でも夜中月が時間の分かる位置に居るのは余りないだろう。まあ、時間なんて気にせず、夜明けてからの事とのんびりしていたのだろう。19夜の月が山際に落ちて、空は曙に、帰ってしまうのね、曙の意地悪、なんて書をしたためていたりして。19夜が夜更けて良いように思ったけど、この場合は13夜かも知れない。
どちらが先に店を出るか、悩んでいるようだ。
彼は先に出て私は残された。
先に行くよ、ということだけど、ひとりポツネンと残され、なにやら暗示しているように思う。
私が先に出て彼が一人飲んでいるのは首尾よからずで惨めなんだろう。
彼が先に出て私を置いてけ堀にしたのなら何も傷つかない。
私はお疲れさまと先に出たいけどだんどりが済んでいる彼が同意するわけも無く、
両者意地を張れば同時に出ることになり、
外で別れればそれでも良さそうに思うがそれはアリバイにならない、
とそこまで対して悩むこともなく結論したのだろう。
まあ受け入れたことだし、こんな些細な計算はあちこちでなされているだろう、
とむしろ面白がらねば、と残り物を摘んでアルコールを飲み干して店を出た。
会計が済んでいるから至極のんびりだね。
待たせることには対して罪悪感は無く通常通り電車で帰途に就いた。
何時ころに着くと言った時間より電車1本遅く家に着くと、電話が来た。
メールを残さないのかな。チャイムが鳴りドアを開けるとこそこそした男が若干縮こまって居た。
男を招待するのは楽しい、主みたいな態度をされるのはすこしムッとするけど、
それにベッドをそれとなく探られるのも気に障る。ベッド派は男を招待しにくいと思うけど、男はそりゃベッドに腰掛けるよ。俯けにダイブして、いい匂い、とベッド相手に尻を振ったりしたら興覚めかむふむふか、私は一回抜いたらと言うかもしれない。
今は布団だからむしろ布団を敷くのを見られるのは良くない。
お風呂に入ってもらってその間に敷くのも良くない。
まあ成り行きの途中で頼めば良いか。
いそいそと敷く様がありありと浮かぶ、ほとんど間違いのないちょっと先の姿・動作だ。

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