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カントリーロード

あれは確か中学3年生のお別れ会的なやつだったと思う。
私たち中学3年生が卒業するということで、過去の担任の先生からのメッセージを見たり、有志の発表、例えばダンスや「学校へ行こう」のパロディを見たり、卒業も近いので異様な盛り上がり方だった。

そうこうしている内に、いよいよ最後の出し物の時間になって舞台上に登場したのは意外な人物だった。当時かなり除け者にされていた、いじめともとれる扱いを受けていた男がマイクを持って現れたのだ。

その彼は確か小学4年生の時に越してきて、前の学校でもうまくいっていなかったそうだ。嘘をつきがちで、自己主張が強めだったから周りから反感を買ったのだろう。(だとしても、そのような仕打ちを受ける理由にはなりません。自分も見過ごしていた節があるのでここで謝らせてください。すみませんでした。)


そんな彼がお別れの会のトリを飾るわけだから、驚きだ。そして、彼は高らかに「カントリーロード」を歌ったのだ。皆が声を上げ大合唱になった。なぜ、「カントリーロード」という選曲だったのかは全く理解できなかったが、会場の盛り上がりは間違いなく最高潮だった。彼は見事にトリの役目を果たしたのだ。私には彼がとても輝いて見えた。心から感動した。


しかし、それからの卒業までの短い期間、彼に対する態度は微塵も変わらなかった。不思議なものだ。まるであの日が嘘だったかのように。


それでも、私は4年が経過した今でもその出来事を鮮明に覚えている。なぜあんなにも感動したのかは今もわからないままだ。


最後まで読んでいただきありがとうございました。


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