少しでも

1997年11月12日(水)
苦しいなあ──
空を見上げた。月がほぼ円くなっていて暖かい夜、六時前。ぼやー、と光ってる。
思えばずうっと苦しい、去年の一時期を除いて。苦しくなければ憂鬱、そうでなければ空っぽだ。
母さんはわたしの生を吸いとる吸血鬼。
わたしはフランケンシュタイン博士の人造化け物。
絶滅収容所の生き残りで、その子ども。

だけど死ぬまでに、少しでも生きなきゃ、と思う。

買い物の帰り道、家が近づいてくると、家に戻りたくない。今日は誰もいないけど。
この場で石になってしまうか、飛んでいって二度と戻りたくない。

歩きたくなった。

南西の風。久しぶりで歩くことが気分よかった。
力を感じた。