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わたしもあなたも老舗です、

生活にテレビがあったころ、ドキュメントをよく見てた。動物の記録とか、歴史、いろいろ。老舗何代目の人を追ったもの。一本の番組じゃなくても、老舗を継いだ人のことばって、けっこうテレビで耳にした。読みものも。
自ずからの流れに乗って迷いもなく老舗を継ぐ人もいるのかな?
「私・自分(たち)の代で店をなくすのは・潰すのは、ご先祖様に申し訳ない」ということばばかりがわたしの耳には残っている。老舗後継者たちの合言葉のようだ。

ふーん・・・わかんないなーと毎度思った。合言葉には前段がある。たいていみなさん、ほかに情熱の対象があった。それを断念して家を継ぐと決めたんだ。
わたし何してんのかな、死ねないから、お腹が減るからなんか食べて二酸化炭素を出してーー地球に負荷をかけてるだけのわたしには、打ち込めるものを持っている彼ら(男女区別しません)の選択は疑問でしかなかった。
だいたい今時「ご先祖様に済まない」って、何?

わたしの両親はわたしを破壊した。そのふたりの親たちも将来わたしを生む人たちを非道に扱った。祖父母たちがわたしをかわいがったことはなかった。「孫はかわいい♡」らしいのに、不思議なじじばばだなと思っていたら、桂小枝さんが謎を解いてくれた。
「探偵ナイトスクープ」で、お孫の話を小枝さんがした。「孫はかわいいって聞くじゃないですか、」でも小枝さんは、そうかなー、自分の子どもの方がかわいいんじゃないのかなー?と思っていたそうだ。ところが娘さんに赤ちゃんが生まれた。その孫が、かわいくて!かわいくて!かわいくて!
小枝さんは考えた、これはどういうことだろう?
そうか! 自分がかわいくてかわいくて育てた人の子どもだからこんなにかわいいのか!!

だからわたしは血縁に価値を感じない。
だからご先祖様に義理を感じない。
だから「ご先祖様に申し訳ない」なんて言われると、はー?

「橋のない川」を夢中になって読んでいた時期がある。
誠太郎さんと孝二さんが大好きになったから、そして「小森」はわたしだ!と切実に感じたから。小森の人たちへの、周りの村の人たちの「感覚」「感情」「ふるまい」は、主に母親からわたしへのそれと同じだったから。
「くつな・蛇」のエピソードを思い出した。孝二さんが通う尋常小学校で生徒が先生に悪戯を仕掛ける。先生が蛇(紐だったかも)に驚く。
孝二さんは、自分や小森の人たちを周りがどう感じているのかを、この一件でまざまざと思い知る。
「くつな・・・」
みんなは小森をくつなのように思っているのか。
孝二さんは足から力が抜けた。孝二さんもくつなは好きではなかった。
(これはわたしの記憶だから、本を調べてないから。)
わたしは自分の母親が自分を蛇蝎の如く嫌っていると感じていたが、ああ、やっぱりそうなんだと、改めてわかった。

「家」「先祖代々」「由緒」
天皇家は万世一系(越から来た継体天皇は?「継体」って思いっきり言ってる。)の血統ゆえに尊いと信じこませようとする国にあって、登場人物の誰だったろう、ぬいおばあさんかしら、おもしろいことを言った。
どこの誰だってみんなつづいてる。みんな遡っても遡っても人間から生まれてる。木の又から出てきた人間なんかどこにもいない。

「絶対的尊い血(筋)」幻想をすっきり相対化。
マインドコントロールさらば!

つづいてるから、それが何? そこで生まれた個々の人の大事なものと引き換えにしてつづけなきゃならないものなの?
人より「家」が大事なの?
自分がしたいこと・していることを諦めて「家」なるものを選んだ人たち、それを選ばせる力を持つ「家」ってなんだろう?
気になるのだった。「由緒なんかない」うちの子が。                                                   

夢を、いっぱい見ていたころ、ばらばらのヘアピンを拾い集めてつなぐ夢を見た。

1997年4月7日(月)
黒いヘアピンを幾つも幾つも苦労して拾い集めた。
またばらばらになってしまわないように、まとめるんだ。
つないでひとつづきの鎖のようにしていった。
ばらばらなときは黒かったヘアピンが、つないでいくとプラチナに変わっていた。
ピンのひとつひとつに「28」が付く数字が刻印させていた。つなぎあわせようとして、つながらないピンがあったので、数字に気がついた。

「28」は夢を見た時の年齢だ。
ばらばらな1年1年がつながれてひとつになると「28歳のいまこの瞬間のわたし」となり、なったことを夢は教えたのだと思う。「プラチナ」は価値を表しているんだろう。
この夢は、いまここにいる自分が、「木の又から」ふと現れたのではないことを教えている。
あのときのあのときのあのあのあのあのーー胎内から、少なくとも確実に胎内からつづいてきたいのちの最先端がいまこのときのわたしなんだと知らしめている。
なるほど、そうなると仇やおろそかにしてはいけない道理だ。無造作に殺していいわけがない。わたしのからだだ、わたしのいのちだ、売ろうが傷つけようが殺そうが勝手次第、などという権利はないことが解る。

そうなって、老舗の跡継ぎたちが何を言っているのか、ようやくなんとなくわかった。
彼らの大変さが想像できる地面ができた。
彼らは大変だけど、自分で選んだのなら不幸にはなっていないだろうと想像する。

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