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教員の育児休業後の働き方について考える(部分休業、育児短時間勤務)

育児休業は最大3年取得することができますが、育児休業手当金が給付されるのは、1歳まで(パパプラスを活用しても1歳2か月まで)です。

育児休業を取得しても、子どもが6か月までなら給与の67%、6か月から1歳までなら給与の50%が給付されますので、贅沢をしなければ生活に困ることはありません。

ただし、1歳以降も育児休業を取得すると、手当金は出なくなります。

単純に年収550万だとすれば、1歳から2歳になるまでの1年間休業すれば550万円の損失となる。(実際には、所得税や社会保険料が掛からなくなるが)

速やかにフルタイムで復帰するという手段もあるでしょう。
残業せずに定時で帰り続ければいいのです。
しかし、それでも学校を出るのは17時近くでしょう。
いくら1歳を過ぎたとはいえ、まだまだ手のかかる年頃です。
早く家に戻り、家庭の時間を大切にしたいと考える方が大半ではないでしょうか。
我が子、家族の幸せを守ることは、後ろめたいことではないはずです。

むしろ自分自身が幸せな教員こそが、子どもたちの幸せを実現できるのではないでしょうか。

年次有給休暇を小分けにして使っていく方法もありますが、子育てする先生が取得可能な休暇、働き方をまとめていきたいと思います。
(ここでは新潟県の例を挙げています。自治体によって制度が異なる場合がありますので、こちらの情報を参考にしながら、ご自身の自治体の制度をご確認ください。)

①育児を行う職員の深夜勤務および時間外勤務の制限


小学校就学の始期に達するまでの子のある職員について、配偶者で子の親であるものが深夜において常態として子を保育することができる場合を除き、制限をを請求できるようになりました。さらに、育児を行う職員が請求した場合の時間外勤務の上限時間が「年360時間」から「月24時間、年150時間」となります。
手続きは、深夜勤務・時間外勤務制限請求書を所属長に提出します。(深夜勤務は1か月前、時間外勤務は前日までに)期間は、深夜勤務は6か月以内の期間、時間外勤務は1年以内の期間です。

最近、公立学校の教員に残業代が支給されないのは労働基準法違反だとして、埼玉県の公立小学校の男性教員(64)が、県に未払い賃金約240万円の支払いを求めた訴訟が話題になりましたが、教員は、時間外勤務を強いられることはありません。その訴訟でも、時間外に行っていた業務の大半が「教員の自主的・自発的な勤務」とされました。【裁判所の判断結果の一部】・​校長から命じられた仕事(労働時間として認める)  ……翌日の授業の準備(1教科5分)、週案簿の作成、通知表の作成、校外学習の準備 ・自主的・自発的な勤務(労働時間として認めない)  ……ドリル・プリントの丸つけ、作文へのペン入れ、教材研究、教室の整理整頓、掃除用具の確認、落とし物の整理 ドリル・プリントの丸つけ仕事は「自主的・自発的な勤務」であり、労働時間にはカウントしないそうです。
判決の理由には、「校長は児童にどんな課題を出すか指示していない。田中が自らの教育的見地に基づき、自主的に決めていた」と書かれました。
(下記のHPリンクから一部引用)

なので、この制度を請求しなくとも、時間外勤務を強いることはできないのです。
しかし、現在の学校の認識とはかけ離れていて、多くの教員はそれを認識していません。管理職にもその認識が薄い方もいます。
そのような環境下で、「自分は時間外勤務はしない!」と明言する意味では効果があるかと思います。

②部分休業


小学校就学の始期に達するまでの子を養育するために取得できる休業制度で、1日の勤務時間の一部を勤務しないことが認められています。配偶者が専業主婦(夫)や育児休業中でも取得することが可能です。

・1日を通じて2時間(育児休暇(1日最大90分)等または、介護時間(1日最大2時間)を承認された職員については2時間からその時間を減じた時間)を超えない範囲内で30分を単位として取得できます。
・子どもの託児所への送迎にかかる時間は、育児短時間勤務制度と同様に、子どもを養育する時間にも含めることができます。
・夫婦共に教員の場合は、夫婦合わせて1日の勤務につき4時間の範囲で請求することができ、その時間は同一日、同一時間でも構いません。
・休業期間は無給となります。原則として翌月の給与から時間単位で控除されます。
・勤勉手当の支給基準日(6月1日、12月1日)以前6か月間で部分休業の時間が日に換算して30日を超えた場合は、その時間を日に換算した期間が勤勉手当の在職期間から除算されます。
・昇給、勤続期間の計算からは除算されません。

・部分休業承認請求書、とともにその他戸籍を証明する書類を所属長に提出します。

例えば、16時40分までの勤務であるとして、後ろの90分を部分休業を取得したとします。すると、15時10分が終業となります。
一日90分取得し続けたとすると、約5.2日で1日分の休業となります。月にすると、トータルで約4日程度休業をすることになります。6か月間そのペースで部分休業を取得すると、約4日×6か月=約24日なので、勤勉手当には影響しないと考えられます。ただし、月に約4日休業する分は給与は引かれます。
(概算ですので、詳細は実際に計算してみてください。)

毎日、保育園に預けても、延長保育する必要がなく、家族の時間を作ることができるでしょう。年休と違って給与が少なくなるところに注意が必要です。

③育児短時間勤務制度


育児に際して、1週間あたりの勤務時間や勤務日数を短くできる制度です。

・小学校就学の始期に達するまでの一般職の職員が対象(男女とも)
・勤務形態は以下の4パターンです。
①月~金曜日まで5日間、各3時間55分勤務 (週休 土・日)
②月~金曜日まで5日間、各4時間55分勤務 (週休 土・日)
③月~金曜日のうち3日間、各7時間45分勤務 (週休 土・日と月~金曜日のうち2日)
④月~金曜日のうち3日間のうち、2日を各7時間45分勤務、1日を3時間55分勤務 (週休 土・日と月~金曜日のうち2日)

・年休や休暇、給与については、1週間あたりの勤務時間に応じて減じられます。
・育児短時間勤務承認請求書を1か月前までに提出し、手続きを行います。
・昇給には影響しません。

上記の②のを例とします。休憩時間を12時15分~13時までの45分とします。
始業時間は協議の上、決定されるかと思いますが、保育園の送迎を終えてから出勤し、9時15分から始業とすると、午前中は9時15分=12時15分までの3時間、午後は13時~14時55分までの1時間55分の勤務となります。
保育園に余裕をもって送迎し、昼過ぎには学校を出て、家事をこなして子どもを迎えに行く、という生活が可能です。

実際に育児短時間勤務を活用しました!

育児休業復帰後に育児短時間勤務制度を利用し、小学校教員として現場復帰をしたAさんの声を紹介します。

・後輩の同僚の方が、結婚して子どもが生まれて、時短で復帰したいという話を聞き、育児短時間制度に興味をもったそうです。
・上記の4パターンがあることを校長から紹介してもらい、②のパターンをお願いしました。
・理科や書写の専科の教員として復帰することになり、その教科の専科の配置のある学校に異動することになりました。

「その時子どもが幼稚園へ行っていて、「幼稚園へ8時半に送るんで、その後9時半とか9時過ぎからの勤務がいいです。」って言ったら、 2時間目スタートで、そこからこの時間(4時間55分)っていう感じで入れてくれました。
ただ、時間割を組んだ時に、空き時間がどうしてもできちゃうから、これより長くいた日もたくさんありますね。」
「その空き時間は、理科だったので、実験の準備や片付けなどに充てていました。」
インタビュー記録より

・専科の教員として配置されることが多いようです。
・分掌は少なめに配置してもらい、自分が所属する部の仕事を時間の範囲でこなしていた。
・ただ、通常の勤務もそうですが、きっちり時間通りに毎回退勤できるわけではなかったようです。
・それでも通常の勤務よりは早く帰ることができます。

その管理職はすごく理解があって、その元々の所属校の校長も次新しく行ったとこの校長もすごく理解があって、 新しく行ったところの校長は「育児のために時短取ってるんだから、午前がいいとか、午後がいいとか希望を言って」って言ってくれて、管理職はすごい理解があって、教頭先生も私と同じ時に新しく来た人だったけど、すごい優しくて、よく話聞いてくれる感じ方で、他の先生たちにも私が「育児時短勤務で4年ぶりの復帰です。」みたいな話をしてくれました。
他の先生たちも、「うちも小さい子がいてね」っていう話をしてくれたりとか、「小学校で時短勤務ってどんな感じなの?」とか聞いてくれたりとか、「給料どんな感じなの?」とか、「うちの娘も、今度復帰するんだけど、時短勤務がいいと進めようと思ってるんよみたいな、どんな感じなの?」みたいなとか、話かけてくれたりして、心の中でどう思ってたかわかんないけど、直接嫌な思いをしたことは全くなくって。
インタビュー記録より

・Aさんの人柄ももちろんあると思いますが、管理職や同僚からも支持されていたのだとわかります。
・周りに後ろめたさをもってしまいがちですが、真っ当に取り組んでいれば、同僚からも受け入れてもらえるのですね!

私が「早く帰ってすいません。」みたいな姿を見せると、多分その子たちは、「子供生まれたらあんな感じで謝らないといけないんだ。」とか、「 あ、育児の時短勤務って制度はあるけど、取りにくいんだ」って思わせてしまうと思って、できるだけ「すいません。」じゃなくて、「ありがとうございます。」って言おうとしていた
インタビュー記録より

・自分自身が先陣を切ることで、後に続く方がとりやすいようにしていく。
・必要以上に謝るよりも、支えてもらう同僚へ感謝の気持ちを伝えていくことが大切なのですね!

なんか力出しきれなくって、不完全燃焼的なことはある。結果的によかったなって思うのは、担任じゃないから、いろんなクラスの様子が 知れたり、育児で、自分もアップデートされるじゃないですか。自分の子供育ててたら、だから見る目が変わった。
こんな時、自分だったらどうするかなっていう目でクラスを見れたりとか、あと、職員室にいる時間が増えたことで、職員同士の関係性を客観的に見るじゃないけど、なんか今までと見方が変わったかな。
インタビュー記録より

・担任としてバリバリと子どもと関わる!という感じにはなりにくく、少しモヤモヤすることもあるのでしょう。
・しかし、育児をしている経験は教師としての感性をアップデートしてくれています。
・俯瞰的に学校全体が見れたりもするようです。

人と違うことにチャレンジすることは勇気のいることかもしれません。
しかし、チャレンジできる時期も今しかないのではないのでしょうか。

これからのライフワークバランスを考える一助となれば、幸いです。

参考:「わたしたちにはこんな権利がある」新潟県教職員組合(2022)


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