夕立

無数の線が、窓の外の景色を遮る。雨粒が煙のように空気中を埋め尽くす。
葉や土の匂いが立ち昇る。水分をたっぷり含んだまろやかな風が匂いを運ぶ。
土の上で生きるとは、こんな匂いの中に身を置くということなのだろうか。

木や地面を打ち付ける音に、凝り固まった頭を託してみる。雨を避けられる屋根があることに感謝しながら。

やむと、濡れて色が濃くなった木々が視界に現れた。くっきりと、輪郭を伴って。こんなにも変わるものか。

雨が久しぶりだと、草木が青々、生き生き、ピンピンしている。乾いた体に水が注がれる喜びを見る。生命力の漲りの美しいことといったら。

ほんの短い時間に展開される視界と空気の大変化、水の循環、命の営みに心奪われた、夏の想い出。

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