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お好きでしょ、こんなのも……!?

割引あり

お嫌いですか、ロボットは?#83 いつもおんなじ、じゃあねぇ……。


――おやっ、たにがわさんからメールが来てたのか。気づかなかった。なんだろう。。。。。。

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マスター元気? オレは今週も疲れています。実は今日、急に開催中の展示会が見たくなって東京にいます。先週に続き、たぶん今週も店に行けそうもありません。ごめんなさい。たぶん来週は店に行けると思いますので、よろしくお願いいたします。

たにがわじろう

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――フフッ、たにがわさん、相変わらず今週も忙しそうですねぇ。。。。。。


――あれっ! たにがわさんじゃないですか? まずはいらっしゃいませ。

 マスター元気? いやあ、今週もほんと疲れたわ。

――おやおや? 東京出張じゃなかったんですか? メールの着信に気づかず、ちょうど今読んでたところなんです。
 いや、そうじゃないんだよマスター。先月で今年上半期の決算を締めて全て完了、問題なしと思ってたんだけど、肝心のアップデートを忘れててさぁ。部長、いや社長から電話で大目玉くらってさぁ。「グローバル本社の時間では今日中なら間に合うから、何が何でも今日中に送れ!」って言われちゃってさぁ。今日はオフィスに誰もいないから、誰かに頼むワケにもいかず、慌てて戻ってきたんだよ。ファイルを更新して、本社のシステムにアップロードすれば済むだけ。そのためだけに、わざわざ戻ってきたんだよ。

――いつものでいいですか? ジャックソーダで。
 うん、頼むわ。レモンをぎゅっとしぼってね。えっと、今夜のおすすめは「まずは塩焼きで。飛び魚の南蛮漬け」かぁ。へぇー! トビウオなんて、あごだしの汁物ぐらいしか食べたことないよ。塩焼きと南蛮漬けなんて、あれもこれもと随分と豪華だね。あれもこれもと言えば思い出すよ、南川鉄工の案件を。あれこそ発想の転換、いつの間にかロボットハンドを自社の製品ラインアップにしちゃったんだよなぁ……。

 旋盤っていう機械があるんだけど、マスターは知ってる? 陶芸のろくろとか、こけしを削る機械みたいに、回転する台に部材を固定して、回しながら部材に棒や刃物をあてると、えぐれたような溝ができたり、部分的に細くしたりできる。主に円筒状の部材を加工して部品にする加工機のことを言うんだ。

 もちろん最近は、回転台が2つだったり、回転台の他に横からドリルで削る機構がついていたりと、いろんな種類の機械がある。まぁ一番基本的な、ベーシックな工作機械と言ってもいいだろうね。

 岐阜県高山市にある南川鉄工は、その旋盤の回転台につかむように部材を固定するチャックと呼ばれる部分を作っているメーカーなんだ。

 円筒状の部材を固定して、回転しながら加工するから、回転体の中心に対して正確に、部材の中心を合わせて固定しなければならない。中心からずれて固定したり、加工中に中心がぶれたりしてもいけない。いかなるときも中心位置を守りながら、しっかり固定し続けなければならない。固定には、外円から内側に伸びる、3つの爪状部品の開閉で固定する仕組みで、旋盤にとっての重要パーツなんだ。

 南川鉄工はそのチャックの物をつかむ技術を使って、5年前から産業用ロボットのロボットハンドの製造を始めたんだ。特徴は、南川の独自技術へのこだわりにある。旋盤用のチャックと同じように、爪の開閉機構に工夫を凝らしたうえで、独自機構を採用し、高い把持力、つまりしっかりつかめるロボットハンドを実用化した。

 南川はつかむ力だけに満足しなかった。3年前から磁気式スケールを組み込んだロボットハンドを開発した。つまり、ロボットハンドが部品をつかむと同時に寸法も測定できる。測定誤差はプラスマイナス2マイクロ、つまり1,000分の2ミリしか誤差が出ない優れモノなんだ。部品をつかみながら同時に寸法を測定できるから、作業工程も集約できて、全ての部品を検査できる全数検査を可能にしたんだ。

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