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5年、10年前の戦略が通用しない時代

10年ひと昔というが、今の感覚で言えば10年前ってもはや「ちょっと前の時代」にすら感じる。

10年前、JTCへの転職はまだ確度の高い勝ち筋だった

私が今の仕事に転職してから9回目の春を迎える。
9年前の今頃は長年の非正規雇用から脱出した達成感で希望に満ち溢れていた。最初のお給料が非正規雇用時代からいきなり倍になったのは良い思い出だ。

9年前当時の地方って本当にロクな仕事がなくて、数少ないまともな内容と条件のお仕事には応募者が殺到。とんでもない激戦になっていた。
私も競争倍率250倍なんて転職試験を受けたりもした。

私自身の転職活動は約3年に及んだ。

非正規雇用から脱出して、少なくとも平均的なお賃金での暮らしを実現するにはどうしたらいいのか。
考え抜いた結果、ハローワークに常時転がっているようなものでは私の希望は叶わない、との結論に至る。
年に1,2件あればいいという頻度の「数少ないまともな内容と条件のお仕事」に狙いを絞って、その機会を伺う日々となった。

「数少ないまともな内容と条件のお仕事」とは。偉い人たちが市場縮小や業界内での立ち位置を考慮せずにエクセルで適当に均等配分した謎のノルマが課されたり、利益優先主義が行き過ぎて社会の誰からも求められていない糞な商品やサービスを提供するようなお仕事(=非正規雇用で長年私が従事してきたタイプの仕事)ではない、というのが私の求めたお仕事だった。

自ずとJTC(ジャパン・トラディショナル・カンパニー=伝統的な日本企業)くらいしか選択肢には残らなかった。ありていにいえば、条件と福利厚生とコンプライアンス遵守の感覚がまだまともなJTC以外を眼中に入れるな、というのが転職活動時期の私の基本戦略だった。

私の転職活動は、地方都市で条件を絞り、数多のライバルたちを蹴落として掴み取る蜘蛛の糸だった。あまりの厳しさに、県内に限っていた範囲を諦め、隣県、地方(私は九州在住だったので、九州地方すべて)くらいまでは範囲を広げる構想もあった。

少し話が脱線するが、現在の私を知る人は「なぜ起業を考えなかったのか」と思うだろう。非正規雇用街道を驀進してきた私程度が起業して生計を立てていけるとは思えなかったので、基本的にはどこかに就職という感覚だった。

つまり9年前、少なくとも地方都市に住む私にとって仕事とは「応募者多数で、少ない椅子を奪い合うもの」だったのだ。
事実、求職先は毎回すごい倍率になっていたので、客観的にも誤った認識ではなかったと思っている。

あれから10年後、時代の移ろいに対処できず悲鳴を上げている

月日は流れ2024年、いわゆるJTCそのもののような体質である弊社の求人は苦戦を強いられている。
元々派手さの少ない、地味な業界ではあるのだが、色々な条件面において全て弱いため良質な人材確保が難航している。

弊社も工夫はしている。

新卒採用の対象を大卒だけでなく、高卒からに範囲を拡げた(これによって低資質の若手職員も一気に増えたので悪手だと個人的には感じている)。

当たりはずれのある公募の採用試験だけでなく、一般職員や派遣職員からの任用変更制度を整備して人材の囲い込み姿勢を明確にしている。

異動制度や人事制度を見直し、働きやすさを前面に出している(が総合職と一般職をいきなり統合したりしたので現場の混乱はずっと続いている)。

しかし、工夫よりも退職者増、採用者不足が慢性化しており、欠員補充が間に合わないまま年度を重ねている。

「応募者多数で、少ない椅子を奪い合う」などという状況は遠い昔だ。

仕事は変わらない、他社の存在も同様、ならば何が変化してこのようになったというのか。いくつか理由は察しが付く。

・圧倒的に人口減少が進んでいる
この9年間の間に日本社会全体の人口が相当減ったのだと思われる。
それはエビデンスを探してみると確かにそう。

医療の発達で高齢者の寿命は延びた。
反面、社会負担の重さに耐えきれず出生率は低調なままだ。

この傾向が意味するものは、現役世代、生産人口が不足しているという事実だ。元々少なくなっているのに加えて、生産人口が増えていない。
当然、労働市場の絶対数は減少している。

・地方社会に留まる必要性が薄まりつつある
交通網の発達の低廉化が進んだことから地方出身者も都市部に行ったことがないという人は少なくなった。
買い物は都市部に行ってから、という人も相当数いる。
また、地方社会は人口減少や限界集落(というか限界突破した無人集落)といった問題に直面している。
当然それに応じて市場は縮小するし、お先真っ暗な地方で営業する中小企業・小規模事業者は雇用を拡大しにくい。
人がいない、縮小する市場、労働条件の悪化…
それでいて、都市部を見聞したことがある割合は増えているし、移動も安価になった。
ならばもういっそ地方を捨てて都市部に行ってしまうというのはありなんじゃないかという話も出てくる。

10年前に自身が計略した身の振りも危うくなっている

と、まぁ、10年弱の間にこれほどに状況は変わった。
私自身も転職当時に思い描いていた姿とは程遠い。いいことも、悪いことも、色々なことがあった。なので転職前後に計算していたこととは何もかもが違う。

なにより、残された現役時代と、延長戦になるはずの10年程を、無策で今の会社にしがみついているだけの方針ではとてもじゃないが生き抜くことはできないだろう。

従来ならばそれもできたかもしれない(いわゆる、逃げ切り戦略)。だが、組織そのものが傾き始めている。城を枕に討ち死に…でよければまぁそれもよしだが、現実は何かしら飯を喰っていかねばならない。

本業でのスキル、立ち位置を伸ばしていくというのも有効な手段の1つではあるだろうし、大事なことではある。そのことを否定はしないし、私も専門分野の学習は進めている。
だが、事はそれだけでは済まないかもしれない。
転職後、確かに収入も立場もステップアップしてきたが、それを上回るペースで世間が厳しくなってきている。

本業という主砲1門だけでは、戦い抜くことが難しくなってきているのだ。

解決策を、共に語らい、見つけていこう

私は「だから皆副業をしましょう」とはなかなか言いにくい。
副業以前の人のほうが圧倒的に多いことも理解しているし、安易に「副業で解決だ」という話には相当な割合でフェイクが混じってくる。

ポジショントークってのもあるけれど、本業しがみつき戦略のほうが結果論としては正解だった…という未来線も人によってはあると思う。(私自身は年齢的なものと、メンタルを病んで休職した前後でいわゆるルートからは外れちゃったかなということを理解しているので、この路線は難しくなったと判断している)

だが、私と同様、過去10年ほどの間に、どうやらこのままだと非常にまずいことになるのではないか…という展開を予想する人もかなり多いのではないかと思っている。

幸いなことに、今はネットが当たり前、SNSが当たり前の時代になった。なんかちょっと焦げ臭くなってないか…?という状況を監視して、お互いにケツに火がついてるぞっていうアラートを発して、じゃあどうやってサバイバルしていったらいいんだ?っていう情報を、本当にマジのガチで悪意のない情報を共有できるルートを作ることが今の最善策じゃないのかな。

後世になると、あの時こうしておけば滅亡はなかったかもしれない…とかよく語られたりする。今と今後って、まさにそういう分岐点にあるんじゃないのかなというのを近年非常に強く感じるんだ。

多少なりとも、肌感覚にかすっている人がいたら、UNITEしようよ。

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