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- 7days book cover challenge, DAY6 -

「7日間ブックカバーチャレンジ」企画のルールからは逸脱したやり方ですが、7冊の本を紹介します。
(前置きについてはDAY0をご参照のこと)

いよいよあと2冊。最初に

「あまり読まれていなさそうだけどお薦めな本」を思いっきりレコメンドするチャレンジとしたい。

などと宣言したはいいが、選書がなかなか難しい。
自分が本を選ぶ時、初見でもつい買いたくなってしまうのは知的好奇心をくすぐられる本なので、今回も少しニッチなテーマから。

『絵はがきの時代』細馬宏通 / 青土社

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著者の細馬宏通さんのことは、かえる目というバンドのボーカルとして知っていた。

早稲田大学文学学術院教授という肩書をもつ学者さんであることを知らず、たまたまWebで見かけた文章の巧みさに感じ入り、この本を手にとってみた次第。
読みはじめてまず「絵はがきはメディア」という、言われてみれば当たり前のようであり、でも意識していなかった事実を言語化されてワクワクする。意外にも郵便はがきの実用化は電報よりも遅かったらしい。封書による手紙は因習化し面倒ごとになっていたので、より簡便なはがきのスタイルが求められたという。今のEメールの衰退の状況にも似ている。
当時は「メッセージを読めてしまう」ことが揉め事や事件に発展する可能性があるとして反発の声も大きかったという。しかし規則を設けながらオーストリアを皮切りに導入されると、多くの人々が「むき出しでメッセージを送る制度」をすすんで利用することになった。
でも確かに、私信でありながら人に読まれても構わないという前提の文章と、時には絵や写真が入っているのはメディア的。絵はがきとは「漏らすメディアである」とは言い得て妙だ。

中古レコードの世界では、状態がきれいな程に値段があがる。盤面の傷はもちろんのこと、ジャケットへの書き込みやダメージなんて以ての外。それだけで値段はグンとさがる。しかし絵はがきコレクターの世界では、未使用と使用済みでは値打ちにさほど差はないというから面白い。絵はがきの場合、書き込みメッセージや消印や切手。さらにはどこかの壁に貼られていたときの画鋲など「痕跡」を重宝する専門のコレクターもいるのだそう。
これもなるほど「痕跡」から情報を読取ったり妄想する楽しさがあることもわかる。「漏らすメディア」としての絵はがきを堪能するならば、一度プライベートを経由しないことには始まらないのだ。

本書では細馬先生自身が古絵はがき屋で見つけた「漏らすメディア」的絵はがき案件もいくつか収録されており、その分析からわかる当時の暮らしや発信者の情緒などが愛おしい。

----勝手にCM----

僕のチャレンジの目標は、薦めた本を誰かが本屋さんで買ってくれること。(個人店の通販であれば尚良し。だけどなかなかな見つからない…)
というわけで、この本が買えるページを紹介します。


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