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- 7days book cover challenge, DAY4 -

「7日間ブックカバーチャレンジ」企画のルールからは逸脱したやり方ですが、7冊の本を紹介します。(前置きについてはDAY0をご参照のこと)

前回紹介した荒俣宏先生は博学にして書物蒐集家ですが、荒俣先生をして「ある大先輩の蔵書展を見学して、すっかり自信を喪失した」と言わしめたのが、日本で最初の植物学者 牧野富太郎博士。妖怪事典の次は植物図鑑を紹介したい。

『卓上版 牧野 日本植物圖鑑』牧野富太郎 / 北隆館

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僕が牧野博士のことを知ったのは、今も住んでいる練馬区の大泉学園に引っ越してきた時のこと。東大泉にて晩年を過ごした牧野博士は自邸の庭を「我が植物園」としており、1958年から「牧野記念庭園」として一般公開されている。僕が大泉で最初に住んだマンションから徒歩5分の場所にある。

関東大震災の2年後、当時はだいぶ田舎だったと思われる大泉の地へ牧野博士がわざわざ引っ越してきたのは、早逝した寿衛子(すえこ)夫人の意見だったという。

せっかく私の苦心の採集になる植物の標本などもいつ一片の灰となってしまうか判らない。どうしても絶対に火事の危険性のないところというので、この東大泉の田舎の雑木林のまん中に小さな一軒家を建ててわれわれの永遠の棲家としたのです。そうしてゆくゆくの将来は、きっとこの家の標本館を中心に東大泉に一つの植物園を拵えて見せよう、というのが妻の理想で私も大いに張り切り、いよいよ植物の採集にも熱中したのですが、これもとうとう妻の果敢ない夢となってしまいました。 (『牧野富太郎自叙伝』より)

自宅完成後、残念にも亡くなってしまった寿衛子夫人の願いは没後に叶い、それから約90年経った今でも「牧野記念庭園」として人々の憩いの場になっている。
数年前に高野文子先生の漫画『ドミトリーともきんす』で牧野博士が取り上げられて企画展が開催された時は、大泉ではあまり見ないタイプのおしゃれさん達が集まった(笑)
大泉民として誇るべき偉人が、牧野富太郎博士なのだ。

そのような土地の縁を介して、自叙伝をはじめとする著作を読んでみた所「植物信仰」とも言えるほどのピュアな熱意に心を打たれた。

私は、草木に愛を持つことによって、人間愛を養うことができる、と確信して疑わぬのである。もしも私が日蓮ほどの偉物であったなら、きっと私は草木を本尊とする宗教を樹立してみせることができると思っている。自然の宗教!” (『植物知識』より)

「その本尊は植物。」とまで言っており、そう考えるとこの『卓上版 牧野 日本植物圖鑑』は「ご本尊図鑑」とも言いかえられるが、ページを捲ってみると「なるほど」とわかる。
1頁に対して3種類の植物の図版が整然と並んでいるが、モノクロでここまで緻密に美しく丁寧に描かれていると本当に「ご本尊」のように植物を大切にされていたことが伝わってくる。美しさだけではない、均一な縦長の画面の中でまるで解剖図のように、必要な部品を配置してあり学術性と美術性を両立させている。
写真ではないからこそ、植物の中のまるで小宇宙のような不思議な美、その神秘に気づかされるのだ。

そしてこの本の佇まいが素敵じゃないか。散歩が日課となっている今、道端の植物を撮影してきてはこの図鑑を開くようになっている。どの家庭の卓上にも一冊、『卓上版 牧野 日本植物圖鑑』があるといい。

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僕のチャレンジの目標は、薦めた本を誰かが本屋さんで買ってくれること。(個人店の通販であれば尚良し。だけどなかなかな見つからない…)
というわけで、この本が買えるページを紹介します


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