入院49日目



 とんねるずのリアル野球BANが杉谷不在で少し物足りなかったが、展開は申し分ないぐらい面白かった。それよりも眠かったので終わったらすぐさまテレビを消して横になった。
 22時就寝で4時ごろ目覚める。友達にすすめられていた「トレインスポッティング」という映画を観る。全編とおしてヤク中の話で、汚い描写が多いのだが、劇中の音楽や描写がいちいちお洒落で、そんなシーンすらグッと引き込ませる勢いがあった。ラストシーンは音楽も相まって、やったれーと主人公に感情移入して、とてもワクワクした。ハイセンスな映画で、何度でも観たいなと思った。
 起きて爽快な映画を観ていたということもあり、朝の血糖値は割り合い良かった。とても気分がいい。

 8時より、箱根駅伝復路。6区の山下りはスピード勝負で、復路の鍵を握る。首位の青山学院大が少しばかりブレーキをかけ、2位争いがますます熾烈に。
 途中でほぼ青学の復路および総合優勝は確定的なものとなるが、3位からシード権争いまでが3分以内に収まるなど、戦国駅伝の名のとおり混戦を極めていた。10区のゴール直前まで予想もつかない展開で、東海大の低血糖症による失速で法政大が滑り込み、激しいシード権争いは幕を閉じた。
 ちょうど青学がメディアに向けて何故か原監督を二回も胴上げしていたころだ。盤石の青学が優勝してもあまり面白くないと思っていた僕からすれば、そんなことはいいからレースを見せろと思っていた。言わんこっちゃない、その裏でとんでもない波乱が起きていたのである。
 そういった争いには関与していないが、今大会で特筆すべきは駿河台大だろう。31歳の教師ランナー今井、元法政大のエースで衝撃的な途中棄権が印象に残る徳本監督など、センセーショナルな話題には事欠かない駿河台大だが、今大会では無事に襷を繋いで完走した。
 メディアではあと数秒で襷が繋がらなかったと、中継所でのお涙ちょうだいをドラマにしたがる傾向があるが、むしろ襷が当たり前に繋がるほうがよっぽど感動的である。
 毎日頑張って練習したろうにという情が湧かないでもないが、繋がらないのは結果として練習や経験の不足によるものであって、この襷を繋ぐためにすべてを投げうって駅伝に捧げてきた人たちが集まっているわけだから、なにごともなく繋がることが逆説的にその練習量を物語っているのだ。
 なにしろ、自ら途中棄権を経験している徳本監督のもとで、初出場のチームが箱根駅伝を完走できたのだから、そのことにこそドラマを感じる。これから常連になるかもしれない、そんな歴史をリアルタイムで見させていただいているのだ。

 今日もオタク特有の早口でまくし立ててしまった。駅伝に興味のない人からすればなんのこっちゃであろう、タイトルと内容がちぐはぐである。だから、申し訳程度に #箱根駅伝 とタグ付けをしておきました。

 箱根駅伝とともに僕(と父)の正月は終わるので、そのあとは達成感と喪失感から1時間半ぐらいは昼寝をしただろうか。
 元サッカー部だが、高校サッカー選手権のテーマソング「ふり向くな君は美しい」を聞くとどうにも悲しい気分になってくるので、毎年すぐにテレビを消すことにしている。阿久悠と三木たかしが作ってるのは確かにすごいけど、あのマイナー調を昼下がりに聞くと、ザ・ノンフィクションの「サンサーラ」並みに心を抉られる。箱根駅伝が終わったことによるロスや、一種のサザエさん症候群のようなものだと思う(僕の正月休みはもうしばらく続くが)。

 起きてからは資格勉強、読書、外来の徘徊に勤しむ。
 ベッドからろくに動かず箱根駅伝を観てゴロゴロ過ごすのは、正月の模範ともいうべきもので、最近はそのように過ごせていなかったので個人的には大変満足している。まあ、今年から日勤勤務なので、あのまま働いていても正月休みはこんな風に過ごしていただろうけれど。
 しかし、病室で過ごすそれはかなり趣の違ったものであった。隣の爺さんの独り言がうるさくてストレスは溜まるが、時間になればご飯は運ばれてくるし、ひたすらなにもしないのが仕事だし、これもまた一興と思えればそれはそれでよいか。
 …思えないな。とにかく三が日が終わる。


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