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読書録002:USJを劇的に変えた、たった一つの考え方

読書録002です。日本のトップマーケター、森岡さんの本「USJを劇的に変えた、たった一つの考え方」です。いつか森岡さんと一緒にお仕事させていただきたい...!

*001は以下です。マーケティングを一気通貫で学びたい方はぜひ。
読書録001:HIGH POWER MARKETING

本書からの抜粋

・マーケターの最重要の役割は「どう戦うか」の前に「どこで戦うか」を正しく見極めること。そして、無理やりにでも会社を正しい方向へ引っ張っていくこと。

・単価と個数を両方とも伸ばすためには、先にブランド価値を顕著に高めておいて、価格弾力性をできるだけ小さくしておくこと。

・USJ変革において究極的に変えたのは1つだけ。それは「消費者視点(Consumer Driven)」という価値観と仕組みにUSJを変えたこと。これがV字回復の最大の原動力。これは「とにかく消費者が喜ぶことならなんでもする」ということではない。むやみにコストをかけて消費者の要求に対応すると、中長期的に消費者価値を生み出せなくなる。そうではなく、「会社側の事情も善意も、消費者価値につながらないのであれば(消費者に伝わらないのであれば)、一切意味がない。」という腹を括った意思決定をできるように会社を変革すること。USJは消費者視点を大切にして、作ったものを売る会社から、売れるものを作る会社に変わった。マーケターの仕事は、会社のお金の使い道や従業員たちのあらゆる努力を、消費者にとって意味のある価値に繋がるようにシフトさせること。

・上記は非常に簡単なようだが、なぜできないのか。それは、会社というたくさんの人が集まっている集団の中では、会社の利害と個人の利害が必ずしも一致しないことに起因する。そのようなしがらみをぶった切ってでも、消費者価値としてのベストを押し通す強力な意思決定の仕組みが必要になる。USJは「消費者の専門家であるマーケティングに、消費者視点を社内横断でドライブさせる仕組み」を選んで成功した。

・「商品を売る」のが営業の仕事、「商品を売れるようにする」のがマーケティングの仕事。「商品を売れるようにする」というのは、放っておいても顧客が商品をバンバン買っていく状態を作り上げるということ。事実、マーケティングが優秀になると、営業はものすごく楽に商品を売ることができるようになる。放っておいても売れるということは、自社商品が顧客に「選ばれる必然(選ばれて当たり前の理由)」を作れているということ。

・マーケティングの本質とは「売れる仕組みを作ること」。どうやって売れるようにするのかというと、消費者と商品の接点を制する(コントロールする)ことで売れるようにする。コントロールすべき接点は、①消費者の頭の中②店頭(買う場所)③商品の使用体験 の3つ。あえて最も重要なものを選ぶと、①消費者の頭の中。

・認知率(Awareness):人間は自分が知らないものに対しては購買行動をとりにくい生き物。まずはブランドの存在を知ってもらわないことにははじまらない。市場を100としたとき消費者が自ブランドを知っている割合を「認知率(Awareness)」という。これが高ければ高いほどブランドの売上は上がっていく。

・ブランド・エクイティー(Brand Equity):消費者の頭の中にあるブランドに対する一定のイメージをブランド・エクイティー(Brand Equity)と呼ぶ。ブランド・エクイティーを競争に有利になるように築くことで、自ブランドはどんどん売れるようになる。マーケティングの本質的な仕事はこれ。ブランド・エクイティーを築くための一連の活動を「ブランディング(Branding)」と呼ぶ。マーケティングの最大の仕事は、消費者の頭の中に「選ばれる必然」を作ること、そのための活動が「ブランディング」である。消費者に選ばれる強い理由になっているものを「戦略的ブランド・エクイティー:Strategic Brand Equity」といい、これこそが選ばれる必然の正体である。

・商品の使用体験においても、リピートや前向きな評判が広がるための仕掛けを事前に準備しなくてはいけない。王道は、商品やサービスのR&Dに対して、消費者が喜ぶものをあらかじめちゃんと作らせておくこと。研究室のこだわりではなくて、本当に消費者価値につながる(素人の消費者に違いがわかる)商品を実際に作っておくこと。これ以上の対策はない。

・もし残念な商品しか作れなかったらどうするか?その時はブランド価値を向上させるために正しい行動をとるべき。消費者を大きく落胆させる商品ならば、ブランド価値を大きく毀損するので世の中に出さないほうがマシ。

・「カネ、ヒト、モノ、情報、時間、知的財産」の6つの経営資源の中で、企業経営において最も大切なのは「ヒト」である。なぜならば、ヒトだけがこれら6つの経営資源のすべてを増減させたり使いこなしたりすることができるから。その意味で、会社の中で最も重要な部署は人事部である。CEOが最初に雇うべき最も大切な人は、マーケティングでもファイナンスでもなく、「人事のリーダー」である。人事のリーダーが優秀であれば、マーケティングでもファイナンスでも優秀な人間を雇うことができる。

・戦略の良し悪しのモノサシは4Sチェック。
①Selective(セレクティブ:選択的かどうか?):やることとやらないことを明確に区別できているかどうかということ。
②Sufficient(サフィシエント:十分かどうか?):戦略によって投入されることが決まった経営資源がその戦局での勝利に十分であるかどうかということ。
③Sustainable(サステイナブル:継続可能かどうか?):立てた戦略が、短期ではなく中長期で維持継続できるかという視点。問題となるのは、競合がすぐに真似をして追随可能となる戦略や、自社の経営資源がすぐに枯渇して継続不能になることがわかっている戦略。
④Synchronized(シンクロナイズド:自社の特徴との整合性は?):自社の特徴(強みと弱み、あるいは経営資源の特徴)を有利に活用できているかということ。
→実際には4つ全てOK!と胸を張れる戦略はあまりない。すごくうまくいった戦略は、3つほど当てはまった上に、どこかに突出した強みを持つもの。

・コアターゲットが明確に定まったら、コアターゲットの深い深層心理を探る。つまり「消費者インサイト」を見つける。消費者インサイトとは「消費者の隠された真実」のことで、この消費者インサイトをコミュニケーションで衝くと、消費者の認識が大きく変わったり感情が大きく動いたりする。インサイトを衝かれることで消費者は自社ブランドのベネフィット(Benefit=商品便益)を大幅に理解しやすくなったり、欲しくなったりする。消費者の認識を大きく変えるインサイトをマインド・オープニング・インサイトと呼び、消費者の感情を大きく動かすインサイトをハート・オープニング・インサイトと呼ぶ。いずれもブランドの便益を売る驚異的なジャンプ台となる。

・マインド・オープニング・インサイトの例:洗濯剤「アリエール」では、「除菌ができるアリエール」という新バージョンを発売したが、さっぱり売れない。当時は衣服に菌がいるなどという消費者の認識はほとんどなかったので、洗剤が除菌をするメリットが消費者にはピンとこなかった。そこで、「部屋干しの衣類からニオイがするのは衣服にたくさん菌がいるから」というインサイトを衝いた。これにより、消費者は「なるほど!服には菌がついていたのか!」と除菌という便益の価値を一発で理解できるようになり、アリエールはシェアを伸ばした。

・ハート・オープニング・インサイトの例:USJのクリスマスイベントのコミュニケーションは「昼はこれを楽しめるし、夜もこんなこともできます」という当たり前なやり方だった。このときに衝くことにしたインサイトは親の切ない深層心理をエグるものだった。「子供と本気で楽しめるクリスマスはあと何回もない」というもの。TVCMでは大人っぽい表情ができる少女をキャスティングし、父親で2人でクリスマスのパークをデートしているストーリーを撮った。

・重くのしかかるプレッシャーの中でも正しく頭を使い、戦略的に周囲を動かしてチームを勝利に導けるようになるには、プレッシャーに慣れないとダメ。そのためには何度も何度も重圧のかかる修羅場を経験すること。胃の裏側から冷たい汗が滲み出てくるような日々を何度もくぐり抜けて、たいていのことにはビクともしない精神力が培われる。

・身につけるべき「職能」が何なのかをできるだけ早く明確にしておくべき。そして、それを伸ばすべく必死で努力すること。その職能を伸ばすために必要な経験を貪欲に選んでいく。

感想および実践したいと思ったこと

・実践者としての知見がふんだんな具体例とともに生々しく語られており、マーケターのリアルを理解するために非常に良い本だと感じた。語り口もややカジュアルであり、実際に森岡さんから薫陶を受けているように感じる。

・「どう戦うか」の前に「どこで戦うか」というコンセプトは、20代後半から主に自身のキャリアについて適用してきており、非常になじみがあった。それまでは「その環境でトップに入れるように一生懸命がんばる」という形で努力を重ねていたが、これだけで結果が出るほど甘くはない。自身のキャリアもそうだが、ビジネスの中でも「本当にここは最適な戦場なのか?」という問いは持ち続けていたい。いくらオペレーションやマーケティング、戦略を磨き上げたとしても、まったく儲からない or どんどん縮小していく市場で戦うのは限界がある。

・「すべては消費者価値のため」という腹の括り方も自社に取り入れていきたい。HIGH POWER MARKETINGの卓越論:常に他者の利益を優先する、にもつながるコンセプトだなと感じた。仕事をしていく際に、社内事情や制約が意思決定のベースになってしまうケースは多々あるが、そのようなノイズをブチ破る覚悟を常に持っていれば、エクセレントカンパニーへの道筋が開かれるのだろう。

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