湯沸かしはやかん派
こだわりを持っていたつもりでも、意外と簡単に気持ちが揺らいでしまうことがある。
例えばお湯を沸かすとき、やかんをガスコンロにかけている。
実家ではそうしていたから、という理由以外に、「青い炎がチラチラする様子が好き」「お湯がシュンシュンと沸く音が好き」「お湯が沸くのを待つ時間は不思議と気持ちが落ち着く」など、嗜好的な側面も多分にある。
だから、引っ越しをするときは必ずガスコンロがある物件を選んできた。自炊をしなくなって久しい身なので、ガスコンロはほぼ湯沸かし専用。もったいないと言えばもったいないのだが、ともかくそうしてきた。
最近、ホテルや友人宅などで、水を入れてボタンを押すだけでお湯が沸くポットを使う機会が増えてきた。「意外と電気代がかかるらしい」というもっともらしい理由をつけて自分ではそうした製品を使ってこなかったのだが、なんのことはない、やかんでお湯を沸かしたいだけだったのだと思う。
ただ、やはり便利。その誘惑にやや負けそうである。忙しいときは湯沸かしポット、余裕があるときはやかんと使い分けるのも手かもしれない…。そんなふうに、気持ちが揺らいでいる。
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ところで先日久しぶりに実家に帰ってふと庭の片隅に目を向けると、なんと軒先に湯沸かしポットが設置してあった。一瞬「外でお茶を飲む用…?」と思ったのだが、よく考えてみると外に置いたポットで沸かしたお湯を口に入れるわけがない。
不思議に思って母に聞いてみると、「病気になったバラを剪定したハサミを消毒するのに使っている」とのこと。それで煮沸消毒ができるのかどうかはやや疑問だが、何にしても変わった使い方をするものだ。
私も変わっているが、母も変わっている。やはり、血は争えない。
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