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「居心地の良さ」=「適度な囲まれ感」

旧友と会うために、武蔵境駅に行った。
早く着きすぎてしまったために、時間まで駅前の図書館で過ごす。

武蔵境駅前の図書館は「武蔵野プレイス」という武蔵野市の施設。その独特な外観と明確なコンセプトで、設立時は何かと話題になったものだ。
これまで、入り口から中を覗いたことくらいしかなく、ゆっくりと中を見るのは初めてのこと。

上記の公式サイトに、設立理念が書かれていた。

「武蔵野プレイス」は、図書館、生涯学習センター、市民活動センター、青少年センターなどといったこれまでの公共施設の類型を超えて、複数の機能を積極的に融合させ、図書や活動を通して、人とひとが出会い、それぞれが持っている情報(知識や経験)を共有・交換しながら、知的な創造や交流を生み出し、地域社会(まち)の活性化を深められるような活動支援型の公共施設をめざしています。

「新しい形の複合施設」ということで、他自治体からの視線も熱いらしく、とある自治体の職員である友人も視察に行ったことがあると言っていた。

フロア案内図(公式サイトより引用)

入るとまず、真正面にカフェスペース。そこからしてすでに新鮮。
その周りには、雑誌・新聞の最新号が並んでおり、利用者が思い思いに過ごしている。

いわゆる「図書館」は地下一階に降りたところ(地下への階段が奥まったところにひっそりとあったのはやや残念)。
壁の中に本棚が埋め込んであったり、カーブを描いた低い本棚を楕円状に並べて所々に囲まれたスペースが作ってあったりして、空間的にもとても面白い。個人的には、この囲まれた空間がなんとも落ち着けた。

実は、普段図書館に行くことがほとんどない。図書館の本は限られた期間で読んで返さないといけないのがどうも落ち着かず、「本を探す」というとどうしても書店に足が向いてしまいがちだ。
でもやはり、時々行ってみると楽しいもの。思想書のコーナーは正直言って物足りなさを感じる蔵書だったが、歴史書コーナーは壁一面を占めており、端から端までじっくりと背表紙を眺めてしまった。

そして、公共図書館もいいが大学図書館もいい。
私が通っていた大学は文学部のキャンパスが独立しており、専用の図書館(どこの学部の学生でも入れる)があった。当然、人文書の蔵書は充実している。
記憶を辿ると、2年生の木曜日、1限・2限・4限と授業があり、その後18時からアルバイトが入っていた。空き時間の3限と、4限からアルバイトまでの時間、図書館で過ごしたものだ。最上階が哲学関係の棚があるフロアで、窪んだ空間がすべて哲学書で埋め尽くされていてワクワクしたことを思い出す。まさに「本に囲まれる」感覚だ。白黒のタイルが貼られた床も印象的だった。

ちょうど大学の公式サイトに、最上階の写真があった。柱の辺りがぐるりと哲学書コーナーだったはず。

そんなわけだから、本部キャンパスの図書館はほとんど行ったことがなく、仰々しい上にだだっ広くて、どうも近寄りがたい存在(入口に上にラテン語の格言が掲げてあるのも、やややりすぎ感が…)。最近仕事用の資料を探しにそちらの図書館に行ったのだが、やはり居心地が悪かった。

武蔵野プレイスとも共通して言えることだが、私にとって「居心地の良さ」は「適度な囲まれ感」なのかもしれない。それと「適度な軽さ」もまた大事。
そんなことを考えさせられた、図書館体験であった。

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