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シンプルってなんだろう?

What is Simple?


タロアウト絵本『ラニーちゃんとたんじょうびやさん』(講談社 / 1,400円(税別))が2023年5月25日に、ついに発売されることになりました!
今回はその絵でなく文についてです。


『ラニーちゃんとたんじょうびやさん』を描くのに最も大変だったのが、文を書くことです。


当初から「シンプルに」と編集者さんに言われていたし、自分自身もシンプルな文体が好みということもあって楽しんで文章を書いていたのですが、なんだか全くOKが出ない。


理由が分かりだしたのはかなり後半の頃で、それまでは本当に考え込んでいました。


それは「シンプルさ」と「明瞭さ」は違うこと。自分の好みのシンプルな文体とは、言葉少なの抽象的で行間や余韻を読者に想像してもらうもの。しかし子どもにとってそれは不明瞭であり「?」にしかならず、絵本の本筋を追っていく心理が止まってしまうということです。子どもにとってのシンプルさとは、曖昧さを潔く無くした「明瞭さ」なんだと、編集者さんとのやりとりを繰り返すうちに、少しずつ自分の中で気づいていったのです。


こういった経緯で、もともとシンプルに文字も極力少なくすることを意識していたのですが、明瞭な文章にするために、文字がどんどんどんどん増えていきます(汗)。例えば「おはよう!」という文があったとしたら、誰々が言いましたとセリフごとに足していく必要がありました。すっきりオシャレに見せたいなーなんて思っていた文章を入れるスペースからは文字が溢れ出し、泣きそうになる日々。何度も何度も赤ペンでチェックしてもらって、最終的には、シンプルで洗練された文章ではなく、なめらかで明瞭な文章にまとまっていったのでした。


振り返れば、これが一番大変な作業だったと同時に、一番学びの多い、編集者さんと共に絵本を作ってよかったなと思う、やりがいのある作業になりました。これまでの自分の仕事でも、多くの人にわかりやすくするために、シンプルにすることは常に優先順位高く意識してきましたが、本当の意味で「伝わる」シンプルさは、もっともっと奥深いことだったのだと、気付かされました。


絵本を制作している期間に、漫画ドラゴンボールの作者・鳥山明先生の担当編者だった鳥嶋和彦さんのインタビュー動画を観る機会があったのですが、鳥嶋さんの「大人がわかることでも子どもは分からないことはあるが、子どもの分かることは大人も分かる」という言葉と出会い、なるほどと思うと同時に、私の担当編集者さんも僕にそれを分からせるために一生懸命だったということにも気づき、改めて感謝の気持でいっぱいになりました。


そんな『ラニーちゃんとたんじょうびやさん』絶賛予約受付中ですので、ぜひチェックしてみてください。

ありがとうございます


絵本の詳細はこちら


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