見出し画像

書評『博士が解いた人間関係のトリセツ』・カサンドラへの救い

カサンドラ症候群とは

正式な病名ではないが
ASDのパートナーやその周囲の人が
コミニケーション不全により
いわゆる適応障害状態になることです

え、なったことありまます?シンドイです

吾輩のとある先輩は
毎日上司にガミガミと怒られて
すぃましぇんと力無き声を発していて
それはもうどっからどう見ても
パワハラされてるようにしか見えなかった

ある日、上司から説明されたのは
「この人(先輩)が、人の気持ちがわかるようになることはありません」だった

先輩は、確かに話は通じないし
人の心の機微も一切通じない

上司の先輩への行動は
ずっとパワハラだと思ってたけれど
本に書いてある療育の方法をまんましてるだけだと後に気がついた
(先輩を怒鳴ることに意味がないことも、後に気がついた)

価値観が合わないとか
仕事の考え方が異なるとかの次元を
とっくに超えてるし
宇宙人レベルの変人と話してるのとも違う

目の前にいる私そのものの存在を
まるで無視するかのように
感情を丸ごと無視されるのである

それをやられると人は気が狂う
カサンドラ症候群になります

何度話しても伝わらない徒労感
拍車をかけるのは
まるでASDの人には悪気がないということ!!

あまりにも苦しくて
吾輩は発達障害関連の本を30冊ほどは読んだし、あらゆる専門家に相談した

答えとして導き出されるのは
関わるな
である

理系とASD

でも残念ながら理系の業界にいる限り
ASD傾向の人と出会わない方が
よっぽど無理ゲーだ
必ず遭遇すると吾輩は言い切れる

あなたが、もし定型発達(発達障害と対となる概念)やADHD気質で
ASDの気質がないのなら
ASD傾向のある人たちとのコミニケーションは
とても辛いものだと宣言しておこう

ASDの人たちはそれゆえに辛いのか
違う、どちらがマイノリティかの話だ
ASD傾向の人たちが多く
定型発達の人が少ない場所に入ったら
辛くなるのは確実に定型発達の人たちなので
マジョリティとマイノリティの陣取りゲームに負けたならすぐにら逆転する

(ということは逆に言うと自分がマジョリティになる職場を探して入った方が生きやすいと言えよう)

努力していないように見える

小説『推し、燃ゆ』の中で
主人公が姉に
「頑張っているって言わないで」と泣かれるシーンがある

いや、主人公は頑張ってる
頑張っているんだけど
頑張ってないように見える

発達障害の人には
百万回パワハラまがいの注意をしたとしても
3日後には忘れてる可能性がある

そう、特性なのだから
苦手なことを死ぬほど努力させても
できないもんはできないことがある

いやいや、特性なんて関係なくとも
1000億回説明されても
理解できないことなんてみんなあるし
その時は呆れられるだろう

ASDはスペクトラムだ
だいたいざっくりとした傾向をまとめることはできるけど
一概にそうだとも言えず
吾輩が今言ってる全ても
サンプルの少ないデータでしかない

その対処法は本屋に死ぬほど散らばっているのに、正直どれも読んだところで徒労に終わる
どうしたらいいかの答えはない
ただそこに、知識が積み重なっただけ

最後にある答えは
やっぱり、
「苦しいと感じる相手とは離れるしかない」

それでも答えが欲しいのなら

他人の頭の中が覗けたなら
人々は争ったりしないかもしれない
相手にある背景が分かれば
平和を選べるはずだ

本書は
ASD、ADHD、GPDの著者が
どのように人間関係を解釈し
人間関係の取り扱い説明を記している

これは非常に面白い解釈であった
科学的のレベルとしてはおそらくそんなに高くはないのだろうけど
高校生くらいの学力がないと読めないかもしれない

が、普段
ASDの人たちのコミニティーで
不特定多数が集まる場合
とにかく平易に話さないと議論や説明が通らないため、かなり抽象度を上げたり
雑に説明せねばなない時がある

本書は著者の
その思考の変遷をロジカルに理解しつつ
しかし文学的な情緒のカケラが
かけがえのない尊さを見ることができる

こうやってその人の置かれた状況や背景を見て取れると、世界が違うように見える

カサンドラになってしまったら
可能であるならば離れるが
結局のお互いのためなのだけれども

相手への少しばかりの愛情や
もしくは、なんでこんな目に遭わなきゃならんのだと腹の虫がおさまらないならば
少し覗いてみてほしい

ASDの研究は主に男性基準であったことが多く
ASD女性に関する本はとても少ない

ティーンに向けた本ならばこれ

生涯の説明ならばこれ


どちらも、これはまた…
女性ならではの多くの苦難が待ち受けてることを思うと、無碍に非難はできないとの思いに駆られる

しかし、どうしても吾輩には拭えない
努力不足なんじゃいのかと言う思いがあった

あらゆる本の、あらゆる臨床医の発言に
どうしても、納得のいかない何か
当事者たちが当事者研究で見つけ出した
光の数々はどこにも記されていない

とにかく、答えが知りたい

本書にはそれが書かれている
これは発達障害当事者と
その周囲の人にぜひ読んで欲しい

そして知ることとなる
答えは自分の中にしかない

誰にとっても人間関係は複雑で
理解し難い出来事に溢れている
常に混乱の激流にのまれて息も出来ない

そうした、自分を激流に巻き込む引力の
「何か」は自分の中にしかない

全ての出来事はラベルをつけ分類して
自分なりの解釈を通して消化していける
知識を深めていけば
きちんと乗り越えていける

著者が自己への理解を通して
他者を理解したように
本書を通じて、きっとあなたも
何かの答えを手に入れることができる

それは差別なのか

障害に関わらずあらゆる
マジョリティとマイノリティの差の中に
我々が抱える偏見や差別心は
必ずしも悔い改めひれ伏さなきゃいけないことなのだろうかと思う

残念ながら
障害なのだから仕方ないだろうと開き直る人を
何人も見てきたし
その仕事の尻拭いは誰がやってると思ってるのだ
真面目な優しいいい人はやる気もなくしてしまう

全ては仕組みの問題で
問題を個人に帰結させるのは意味がない
それは知ってる

ではその仕組みは誰が整えてくれるんだろう
自分なのか?政府なのか?
いづれにせよ、それは先のことだ

ならば今ある心の傷に
希望がほしい

希望はある
ちゃんとあるよ

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?