筑波大学附属小学校研究発表会に参加して
本日行われた2月12日(土)に行われた筑波大学附属小学校の研究発表会に参加しました。その学びをまとめていきたいと思います。
令和の日本型学校教育
国語部のテーマが「個別最適な学びと協働的な学びをつなぐ国語授業」でした。
みなさんもご存知だと思いますが、中教審答申「令和の日本型学校教育」が提唱され、「個別最適な学び」と「協働的な学び」をキーワードに、新たな日本の教育方針が提示されました。
奈須先生曰く、
新型コロナウイルスが流行し、学校が休校した際、日本中の教師が子どもたちにプリント作成し、各家庭に届けました。その時、教師の考え方として、「このプリントを渡さないと子どもたちが勉強できない!」と言うものがあったと。
新しい教科書は配布されていました。しかし、その教科書を使って子どもたちが自ら学ことができないと教師は考えていたのです。
子どもたちが自ら学べるように、学び方を教え、道具を渡していく。
学び方は人それぞれ違って良い(個別最適な学び)
一人ではなく、友達や地域の方と学んだっていい(協働的な学び)
そういう考え方に変わっていかなければいけない、と言うのが、令和の日本型学校教育だと考えています。
白坂先生 問い日記
これから授業実践をされた3名の先生についてまとめていきたいと思います。
まずは白坂先生。最近、子どもたちの「問い」を元に単元を構成している先生です。
教材は「ごんぎつね」
1次で感想文を交流する。
2次で問いを作り、検討していく。
3次でごんぎつねを読んだ後の感想を書いて交流する。
2次の「問いづくり」はこれまでも実践が行われてきました。アメリカでの実践が日本に伝わってきました。
「質問づくり」という名前でしたが、教師が発問ではなく、子どもたち自身の問いを元に学習が進んでいきます。
白坂先生の「問い日記」も子どもたちの問いを大切にされている実践です。
まず個人で問いをたて、全体で読み進めていく問いを決定します。
その後、決定した問いがどうだったのかを評価し、日記に残していきます。
このセットを2、3回繰り返していきます。
問いが決定したのち、読み進めるのは一人の場合や複数で行うことができます。自分に合った学び方を選択することができます(個別最適な学び)
問い作りの弱点
私も問い作りを実践してきましたが、最大の弱点は、子どもの「問い」だけでは必ずしも単元の目標を達成することができない可能性が高いと言うことです。
教師は、単元の目標に向かって単元を構想していきます。必要な知識を与え、思考させていきます。しかし、子どもたちはそんな目標など知ったこっちゃありません。本当に疑問に思ったことを問いにしていきます。そこに忖度はありません。
それが良いのかもしれませんが、単元で身につけるべき力を養えないまま終わってしまうことがあります。
ごんぎつねだと、色彩表現や情景描写は抑えるべき表現技法だと思います。
それを子どもたちが問いにすることができるかどうか。
白坂先生は、もし子どもたちが問いを立てられなかった場合、教師が提示するとおっしゃられていました。大賛成です。全て子どもの問いで進めていく必要はありません。子どもの問いをベースとしながらも、つけさせるべき言葉の力は提示していく必要があるでしょう。
青木先生 フレームリーディングからフレームライティングへ
僕が初任の時に青木先生の授業を実際に観にいきました。
当時はフレームリーディングを実践されていて、フレームで文章を捉えていく学習をされていました。
今回はいよいよ読むから書くへレベルアップしていました。
物語のフレームを活用して、実際に物語を描いていく。
僕が実践している「作家の時間」に通じるものがあると感じました。
全員が作家となり、ファンタジーを作っていく。
そのために、ファンタジーを読む。
書くために読む。
学びの必然性が高いと感じました。
わけもわからなく読むのではなく、目的意識を持って読む。
単元の流れとしては、
1次 ファンタジー作品を読む
2次 「きつねの窓」を読む
3つぎ ファンタジー作品を創作する
1次では、一人一人がファンタジー作品を選択して読み進めていく。(個別最適化)
その後、同じ作品を選んだ人同士でグループを作り、解釈をまとめていく(協働的)
2次では全員で「きつねの窓」を読み、ファンタジーのフレームを形成していく。
作品の主題をまとめていく。
3次ではペアを作り、作品を創作していく。
お互いにアドバイスをしながら完成させていく。
作品を創作する上で大切なこと
私が作家の時間の実践で大切にしていることは、作家の技を盗んで生かすこと。
物語を学習したときは、必ず作家の時間で活かせるように声かけをしている。
例えば、「大造爺さんとがん」
活かせるポイントは、情景描写。自分の作品に情景描写を取り入れるように伝えていた。
今回の青木先生の提案で大切だと思ったのは、
まず、自分の作品の主題を考えさせるところが興味深いと思った。
作品には、作者の伝えたいメッセージが隠されている。その主題を読み解く授業が今まで多くの小学校で行われてきたが、逆に自分が主題をもって作品を作り上げていく。
この考え方は「作家の時間」にも生かして行けそうな気がした。
桂先生 1日の仕事リーフレット
最後に桂先生の発表をまとめて終わりにする。
桂先生といえば、UD。ユニバーサルデザインを広めた先生で、どんな子どもも授業に参加できるようにすることに重きを置いている先生である。
今回は、UDL。ユニバーサルデザインラーニングを元に「学びのエキスパート」を育成する授業を提案された。
「学びのエキスパート」とは、自らの学びを舵取りできる子供を指し、子ども自らがゴールへ向かって教材や方法・手段を自分で選択して、自分自身を評価することのできる子を意味している。
教材は、「動物園の獣医」
私も初任の時に研究授業で、フレームリーティングを用いて「どの仕事が一番大切だと思うか」という問いで授業をしたことがある。
子どもなりの解釈が出て盛り上がったが、結局どれが正解なのか決められず、オープンエンドで終わった学習だった。
今回は、リーフレットを書くというゴールのために、説明文を読んで書き方を学ぶ。
子どもたちは仕事を一つ選び、リーフレットにまとめていく。
その際、「毎日」している仕事と「その日だけ」している仕事をどう書いていくのかがポイントとなる。
本論の事例として、何を選択するか。
例えば、サッカー選手を紹介する子どもがいる。その子は「昼食」を仕事として本論に提示した。
スポーツ選手にとって、健康は大切であり、練習後の食事も「仕事」として捉えたのである。「昼食」は毎日している仕事として言えるだろう。
しかし、「その日だけ」と言う仕事もある。まさに獣医は、日によって仕事が異なる。緊急の手術が入ったり、手当ててが必要になったりするだろう。
そういった、何を本論に事例を書けば、その仕事のことが読者に伝わるのか。それを学ぶために、2次で「動物園の獣医」を読むのである。
学びの必然性を生む
桂先生が使われていた言葉。「学びの必然性」を教師が生ませていく必要がある。そのためのゴール設定は、必要不可欠だろう。
読解だけで終わらずにその先を目指す。そのための読解とすれば、学ぶ意味が生まれ、子どもたちも主体的に学ぶに違いない。
令和の日本型と言うけれど・・・
令和のというが、かねてよりアメリカのドルトンプランや奈良女子大学附属小学校などで古くから実践されてきた。
それを全国的にやっていこう!と言うのが今回の答申だと思う。
言葉は使っているが本当に理解して実践できているのかを私たち教師は考えていかなければいけないのかもしれない。
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