![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/45713859/rectangle_large_type_2_2282b4c00fce2649871e98ef83f20c58.jpg?width=800)
夜明け
夜が明けた。
窓から差し込む光が少し眩しくて目が覚めた。
時計を見ると4時過ぎだったが、今日はやけに寝起きが良かったので思い切って起き上がってみた。
リビングに行き、『俺ら東京さ行ぐだ』を聴きながらコーヒーをいれ、一気に飲み干した。
後でわかったことだが、この時にした火傷はかなり重度のものであった。
だがこの時は、『俺ら東京さ行ぐだ』の歌詞を考察することに必死だったため、全く気が付かなかった。
時計を見るとまだ5時にもなっていなかった。
せっかくなので近所を散歩してみることにした。
玄関を出るといきなりゾンビがいた。
とても現実とは思えず言葉を失ったが、ゾンビは私よりも驚いており、腰を抜かして「はわわああ…」と言っていた。
後でわかったことだが、このゾンビは2年前にゾンビ大学文学部を主席で卒業していた。
だがこの時は、陽の光に照らされた朝の街に見とれていて、ゾンビの学歴に思いを馳せることはなかった。
腰を抜かしていたゾンビだが、やはりゾンビにもプライドはある。
ゾンビはおもむろにキリッとした表情になって立ち上がると、突然私に噛み付いた。
私が「へぇ~、ちゃんとゾンビらしいとこあるじゃん」と言うと、ゾンビは「へへへ」と笑って頬を赤らめた。
それから私とゾンビは、お互いの将来の夢について語り合った。
ゾンビは口が非常に臭かったので、話は全く頭に入ってこなかった。
だが、ゾンビの熱い思いは胸に深く突き刺さり、私はいつの間にか涙を流していた。
3時間半ほど話し、LINEを交換してからゾンビと別れた。
ゾンビは、たとえ体が腐っていても心は全く腐っていなかった。
私もそうありたいと強く思いながら、ゾンビに噛まれた傷跡にそっと手を置いた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?