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たべるということ

ついにこの日が来てしまった。離乳食である。

糖水と母乳しか飲んだことのない子がいよいよ固形物を口にする。

LINEの文面からすでにワクワクが伝わってくる祖母たちをさておき、大人の料理のように適当に済ませるわけにはいかない献立が増えることに、半月ほど前から気が重たかった。

泣いたらおっぱい、これだけで皆がしあわせだった生活に荒波が立つ、そんな気がしていた。

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出産祝いで親戚にリクエストした食器。もし一口も食べなくても可愛い食器で写真を撮ればそれだけで続けていけるような気がしてセット一式をお願いしていた。

昨日になっても気が重たくて、やらなきゃやらなきゃと思いながら今日というこの日までついに1度も離乳食について調べなかった私が、都合がいいことに食器を洗いながらつい口元が緩んでしまう。

ちいさなフォークやスプーン、赤ちゃんの手のひらサイズのものは どれも本当にかわいい。

娘に見せてみると、食器は一瞬でおもちゃと化した。

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これだけ強く興味を持っているのなら、食べるかもしれない!根拠はない。むしろ願いに近い。

ちなみに、それぞれの“母”に聞いたところ、私の場合は離乳食をほとんど口にすることなく、実母は離乳食がきっかけで育児ノイローゼになった。夫の場合は、年子の第二子だったことも影響しているのか義母は「本当に覚えていない」と言う。覚えていないくらいなのでそれなりに食べたのでは、ということだった。

夫の血が濃いことを願おう。

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大人だと2口ぶんくらいの白米を十分な量の水で15分ほどじっくりと炊き上げる。家にある一番小さな鍋でかき混ぜる十倍粥はまるでおままごとのようだった。

膝に抱え上げ、ゆっくりとスプーンを口に運ぶと、ちゅうと吸い込んだ。吐き出されるのを覚悟しすぎていたため、私が思わず大きな声を出してしまい目を丸くして驚く娘。

夫に「撮って撮って!いま撮って!」とスマホを渡し、3分ほどの“はじめての食事”を家族3人で楽しんだ。

口からこぼしながらも、自分でエプロンの裾をしっかりと握って食べようとする娘。誰も教えていないのに、「口に含んでみよう」と本能的に思える赤ちゃんに思わず感動してしまった。(自分のときは頑なに含もうとせず吐いたそうなので個人差がある)

記念すべき離乳食初日、せっかくなので、スプーン2口ほどが進んだところで、夫と交代した。

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ゆっくりと粥を口元に運ぶ。

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秒速の拒絶。

なぜだろう。夫にも私にも分からない。

四苦八苦してそこからスプーン1口ぶんほどを食べて、あとはねだるままに母乳をあげて昼過ぎに寝息を立てる娘。

結局ほとんど残したが、それでもこのスプーン3口を私はきっと忘れない。

ようやくやる気スイッチが入り、ネットで「離乳食 進め方」で検索をかける。そうか、今日まとめて粥を作って冷凍しておけば、明日は電子レンジで温めるだけで良かったのに…。

こんなレベルの新米母だが、明日も娘と強く生きる。


**母をノイローゼに追い込むほど食べなかった(らしい)私だが、現在伸長167cmで誰よりも大きく丈夫に育った。気楽にいきませう。

2020/04/18 こさいたろ


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