見出し画像

矢野顕子を人間国宝にして上原ひろみを五輪開会式に出すべきだ

矢野顕子と上原ひろみのデュオツアー「ラーメンな女たち」の追加公演に行ってきたので、とりあえず途方もなく素晴らしかったとここに言っておく。とりあえず数年ぶりにCD買うくらい素晴らしかったと強調しておく。

どのくらい凄かったかを言葉にするのも馬鹿馬鹿しいが、極めて個性的なピアニスト2名のデュオでありながら一体感のある濃密な演奏が続けられ、かつそれぞれのヴォイスが失われていないということが奇跡的であり、ピアノ・デュオでこんなことができるのかという新たな発見がある。

上原ひろみをライブで聴くのは初めてだったのだが、その超絶技巧は想像以上であり、あれほどの音数を長時間弾ききる体力と筋力に感嘆する。彼女は現役ジャズ・ピアニストとして世界最高峰だが、過去のジャズ・ジャイアント達にも決してひけをとらない。そのことはミシェル・カミロや今は亡きチック・コリアとの共演でも証明されている。
上原ひろみのピアノを聴くとそのスケール感に圧倒される。その特徴的な音数の多さはもちろんだが、彼女のピアノの比類なさはダイナミクスの幅と音色の多様さにある。まるで一人オーケストラのように多彩で変化に富んだ表現ゆえの音の多さであり、単純に早くいっぱい弾くというレベルではないのだ。
東京オリンピック開会式の舞台で世界に聞かせられる日本の音楽は上原ひろみと宇多田ヒカルくらいだと思うので、是非彼女にその舞台に立ってもらいたい。(少なくとも椎名林檎ではない)

矢野顕子は天才である。ただただ世界で唯一の音楽をやっている。自由で伸びやかなヴォーカルはもちろんだが、ピアノも超絶技巧の上原ひろみに安定した高い技術と超人的な反応でぴったりと寄り添う。人間業ではない。
彼女こそ世界の至宝であり、人間国宝とするにふさわしい才能だと思う(細野晴臣もセットで)。

いろいろ書いたが要するに「凄かった」の一言に尽きる。これがアンコール含めて2ステージ2時間半の公演でS席8000円もしないというのは、ブルーノート1ステージがだいたい8000円だということを考えると破格だ。もう東京公演は終わってしまったが、まだ札幌公演が残っているのでチケットがあれば札幌遠征をおすすめしたい。

あとはこのCDも是非聴かなくてはならない。


(2021年5月27日追記)

あれから4年の歳月が立ち、この二人のデュオを再び生で聴く機会が訪れた。今度はBlue Note Tokyoで。

コロナ時代において苦境に陥ったBlue Noteを救うため、上原ひろみはこの1年間で何十回ものステージで演奏し続けている(100回超えてるかも)。

僕自身もこの1年間でブルーノートを訪れるのは5度目であり、上原ひろみだけで3度目になる。

そして今回の演奏はこれまでの中でもとりわけ素晴らしかった。まず矢野顕子の歌の豊かさ。天が与えた特別な才能。ビリー・ホリデイやルイ・アームストロングのように、その歌声を通じて何かが降りてきてしまうような特別な歌声。彼女を人間国宝にしろと書いた4年前の僕が正しかったことを今回また確認したが、もはや世界遺産にしてほしい。

 「ブルーノートに住んでいる」と言われるほど頻繁にステージに立っている上原ひろみも、ここ最近聴いた中では今回が一番よかった。まず、本人が楽しそうだった。矢野顕子という音楽の現人神に刺激され、上原ひろみの楽想がどんどん引き出されていく感覚。そしてそれにぴったりと合わせて反応していく矢野顕子の凄み。

オリンピック開会式に上原ひろみが立つという僕の予想は外れたけれど、最早ひろみなき開会式などどうでもいいという気持ちだし、彼女たちの特別な演奏をブルーノートという特別な場で聴くことができて満足です。

画像1

画像2

記念にお二人のサイン入りワイン買いました。



お読み頂いただけでも十分嬉しいですが、サポートして頂けたらさらに読者の皆様に返せるように頑張ります。