「日本の論点 2016~17」(大前研一、プレジデント社)
“日本の教育体系から論理学が抜け落ちている”
という問題意識から、現在の日本と世界の諸問題を簡潔に端的に説明する。
論理的に議論が深まらないというのは誠にその通りであり、テレビを見ればすぐわかる。
大前氏の指摘する論理性の欠如は「A=B」かつ「B=C」であれば「A=C」であるという普遍的なロジックが理解されていないということよりは、そもそも前提となる「A=B」という事実認識が間違っているということが多い。
たとえば、わかりやすいのは
(年金制度は)“日本の経済成長率、サラリーマンの昇給率、子供の出生率、そして運用利回り—これら前提が全部間違っているのだから、制度が成り立つわけがない”
というような指摘で、経済成長4%、定期昇給4%、出生率2.0、運用利回り5%がすべて満たされれば成立するという現在の国民年金制度が最初から破綻しているのはすぐわかる。
ちなみに日本の経済成長率は0.59%、定期昇給率2.18%、出生率1.41、運用利回り1.7%くらいである。
「日本の論点」というタイトルだが、後半はグローバル経済・社会のトピックスの説明になる。
興味深かったのは、
“EUは、ギリシャがユーロを離脱した場合の経済的な備えはできている。一方、EUの指導者たちのほとんどは、ウクライナをロシアに押し付けたいと思っている”
というあたりは事実関係とロジックが明瞭で大変わかりやすかった。
イアン・ブレマーの本でも読んでみようかな。
最後に
“本気で日本経済を立て直すなら、「移民政策」「少子化対策」「教育改革」の三つの政策を回し、低欲望社会の問題解決に取り組むしかない。”
といった持論の根拠は特に論じられていないあたりは、別の著書を読めということだと思います。
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