見出し画像

ザ・MRI

今日は、日本乳癌画像研究会の一日目だった。

いつもと違って現地参加できずウェブ参加になってしまったことが残念だったけれど、視聴できたときには個室に近い空間で楽しめたこともあり、内容的にも豊富でとても良かった。

途中ではっと気付き、戦慄が走った。

「造影後脂肪抑制T1強調画像」のことを、「MRI」と呼んでいる世界だったのだ。

僕の中でのMRIというのは、たくさんの画像種の集団だ。

T2強調画像もT1強調画像もあるし、それぞれ「脂肪抑制」という言葉がつくかつかないかで、大きく使い方も見え方も違う。

もちろん拡散強調画像もあるし、DWIとDWIBSはコントラストも撮像時間もうんと異なる。

MRIにはもちろんそのほかに、inflowとかcineもある。それはここでは置いておくとしても、静的な画像種だけでも、通常の読影に少なくとも5つか6つの画像種を見比べて診断している。

だけど、ほぼすべての人が「MRI」という名前だけを使っているのだ。

これが、「乳癌検診学会」とか、「乳癌学会」なら分かる。
でも今日の学会は「乳癌画像研究会」なのである。

だからとにかく衝撃だった。

「ultrafast がきれいすぎて、DWIは少し参考にしているぐらい」という趣旨の発言もあった。たぶんDWIが、いろんな事情できれいには撮れていないからだとは思うけど、BPEかどうか迷うときに使う限定ツールぐらいの意識なのかもしれない。ディスるつもりは毛頭ないけど、いまどきの若い画像診断医がそういう発言をすること自体がはげしく衝撃的だった。

つまり「MRI」は、「コントラストがすこぶる良い造影CT」という意味に限りなく近いのだ。

元画像と再構成画像が区別されて話されることも、スライドに表示されることもなかった。つまり、「空間分解能はだいたいオッケー」みたいな、ざっくりとした世界なのである。

そういう全体的な趨勢にはちょっとがっかりもしたんだけれど、

今、私たちが行っている診断法は、DWIBSや他の画像の見え方の違いに注目し、「再構成」や「partial MIP」、ときには平均画像なども適宜利用していて、かなり正確に真実に迫ることができる。

これまでは当たり前と思っていたことだけれど、時間を使ってきれいに撮る技術や、画質を維持する情熱や、組み合わせて診断すること* は、この2023年においては失われつつあるのだろう。

そういえば、乳癌関連学会では、「造影MRI」というひとくくりの言葉が使われている。

ということは、すごいチャンス到来という意味に捉えることもできる。

手前味噌にはなるけれど、DWIBSほかいくつかの画像で組み合わせ診断する「無痛MRI乳がん検診」のアプローチ** に、希少価値すら出てきたと感じる一日でもありました。

残りの人生は短くなってきたけれど、知りたい人がいたら、いろんなMRIのコントラストや撮像法の調整で「病変を浮かびあがらせる侘び寂び」みたいなことを伝えてあげたいな。

______

* multi-parametric MRI とも言います。
**
第32回日本乳癌検診学会ランチョンセミナー

医療者向け説明


朝、500mLの魔法瓶用にコーヒーをたっぷり淹れて出発します。意外と半日以上ホカホカで飲めるんです。いただいたサポートは、美味しいコーヒーでアイデアを温めるのに使わせていただきます。ありがとうございます。