子どもの問題行動にどう対処するか③

Sさんが構ってもらえる仕組みを作る必要があった。
そして、Sさんに具体的な行動を教える必要があった。

そこで、教室の後ろにベンチを置いた。
名ずけて「コミュニケーションベンチ」
朝、学生全員を集めて話した。

「寂しくなっちゃう時、人に構って欲しいと思う時あるでしょ。そういう時に座るベンチを作っちゃいました!寂しくなっちゃった人はここに座りなさい。そしたら、必ず誰かが話に来てくれます。柏田先生もとんできます。授業中でもいつでも使えます。」

「翔和学園の先輩たち!ここに座ってる人がいたら、寂しい思いをしてるサインです!翔和学園の威信をかけて、思いっきり構っちゃいなさい!」

「はい!」と大学部3年生。

朝、先生たちと、ベンチの意図を共有。

もちろん、Sさんには朝、真っ先に伝えた。
「Sさんが寂しくないように、こんなベンチを作ったからね!寂しくなったら使ってね!」
朝、早速一緒に座ってみると、Sさんの周りに先輩がいっぱい。ニコニコのSさん。
満足して、授業に移動した。

大事なのは、Sさんがフリーズする前に対応すること。
「Sさん、そろそろ寂しくなったんじゃない?」
「ベンチに行ってみる?」
と、教員から声をかけるようにした。

休み時間、授業中。
何度も、こちらから声をかけて、一緒にベンチに行った。ベンチに行くと、みんなとお話できる。Sさん以外にも、このベンチは大人気だった。

Sさんは、1日騒ぐことがほとんどなく過ごせた。1回だけ、職員ミーティングのあったお昼に騒いで、ロッカーを通せんぼしたけど。

「寂しくなっちゃったんだね。ベンチで待ってるね!!」と言って私は、その場をすぐ離れた。
Sさん、ベンチの方にやってきたので、沢山おしゃべりした。
望ましい行動を取れた時に、いっぱいアプローチしてあげるのである。

Sさん、放課後残ることなく、すぐに下校して行った。いっぱい構ってもらえたから、放課後に騒ぐ必要がなかったのだと思う。

次は、ベンチに座ったとき、友達と話すスキルをSさんに教えてあげたい。
彼女の孤独にプロの教師として向き合う。

指導の後、学園長に言われた。

「問題行動に対応する場合、一つずつ、凝縮した小さな行動を教えるといい。
この行動さえとっていればいいという勝ちパターンを作ってあげる。
後追いにならないように、常に先手を打つ」

「多くの場合、無視する所と、構う所が逆になっている。問題行動が起きていない時に、どれだけ関わっているか?
多くの指導は鎮静しているだけで、正しい行動を教えていないんだ。」

「他にも、行動を改善しなきゃいけない学生はいっぱいいる。同じように考えなさい。つまり、『この子にどうしても取って欲しい行動一つ』ここまで絞り込んで考えるんだ」