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読書感想文 「東天の獅子 天の巻・嘉納流柔術」

 連休中ということもあり、「kindle unlimited」(読み放題)に登録したこともあり、久しぶりに、小説に溺れてみました。夢枕 獏先生の著作になります。
 端的に言えば「講道館創成期の物語」をモデルとしたフィクションになりますが、講道館の黎明期における嘉納先生、西郷先生、横山先生などの実在した方々を登場させ、武道家としての面に強く光を当てた物語でした。また、大東流の武田惣角氏が存在感のある役として登場しています。
 ジャンルとしては「格闘小説」とでも言うことになるのでしょうか。バイオレンス的な表現も多くあるので、人にはお勧めしにくい内容ですが、全4巻をほぼ一気読みしてしまいました。だって
・ 筆者も少し足を踏み入れた「講道館柔道」の話なのですよ
・ 西郷先生、武田惣角氏は福島県会津若松市出身なのですよ
・ ファンである夢枕 獏先生の作品なのですよ
こんな、三要素が詰まっていたら、楽しくて仕方ないじゃないですか。

 ちなみに、本来は「前田光世(コンデ・コマ)の物語」を構想していたのに、その序章のはずの「講道館創成期」だけで4巻を費やしてしまうのも、夢枕先生らしく、ファンとしてはニヤニヤしてしまうポイントになります。

 さて、物語の終盤に入ったところで、大竹氏という、主要ではない登場人物が西郷先生に語る台詞がまた心を揺さぶります。(抜粋して御紹介します)
人にゃぁね、最後のどんづまりのところで、ひとつだけ持っている権利がある。馬鹿なこととわかっていて、それをやる権利ってえのかね。好きな道を選んで、その道の先で死ぬ権利だよ
 
 この小説もそうですが、夢枕先生の紡ぐ物語には「なぜ、闘うのか」というテーマが見え隠れすることがあります。それは同時に「なぜ、生きるのか」「なんのために生きるのか」と問われているようでもあります。
 苦しい思いをして辛い思いをして、悔しい気持ちを抱きながら、鍛え、鍛錬し、稽古をする。それでも試合に勝てるとも限らない。何回かは勝てたとしても、最終的な勝者は1人しかなく、ほとんどの場合は負けて終わるのが、世の中の闘いというものになります。

 さて、Amazonの書籍販売サイトにある「著者紹介」の文章で、筆者が拘りを込めた一文が
「横浜税関勤務時に柔の道に足を踏み入れ、2011年に講道館弐段を取得する」
というものになります。
 ほとんど「著作」の内容とは関係無い紹介文になりますが「なぜ柔道をするのか」「なぜ公タマ伝を執筆したのか」には、共通する想いがあるように感じています。

「スキでやっています。理屈じゃないのです」

 人が好きで、街が好きで、柔道が好きで、動くことが生きることが好きで行動しているのかも知れません。損得よりも、理屈や利益よりも、好きなことをしていたいのです
 そんなことを考えた夏の夜でした。

 なお、今回の見出し写真は夢枕先生の著作「キマイラ11明王変」の表紙を「襖絵」に印刷した作品の写真になります。これは隣の市で「表紙を描いた寺田先生の襖絵展示会」があり、その際に購入したものになります。見出し写真ではわかりにくいので、もう一枚貼りますが、でかいです。5万円で購入しました。これもまた、「馬鹿なことをした」と思わなくもないですが、「それもまた良し」と考えてしまう訳です。

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