【創作大賞】頑強戦隊 メガネレンジャー(第1話)
【あらすじ】
テレビの新番組として企画された『頑強戦隊メガネレンジャー』はどのようにして生まれたのか、から始まりメガネレンジャーによる「視界の、世界の平和を守る戦い」が展開されていきます。
困難、絶望、裏切り、復讐などに直面し葛藤しながらも戦うメガネレンジャーの活躍、そして彼らの「愛と平和」への意志は、新たに生まれた「戦わないヒロイン キューティバニー」に受け継がれて、悩める人々の心を癒していく。
フィクションとトンデモが交差しながら進む特撮っぽい「頑強戦隊メガネレンジャー」と「キューティバニー」の軌跡を、時に真面目に時にフザケながら描いていくナンセンスギャグの物語です。
(あらすじここまで)
1 頑強戦隊メガネレンジャー 推参!
街行く人を襲うタコのような頭を持つ異形の怪人。逃げまどい蹂躙され悲鳴を上げる人々。全身黒ずくめ服を纏い奇怪な声を上げる戦闘員たち。人々の顔に恐怖と絶望が張りついていた。
「そこまでだ、タコデビル」
どこからともなく精悍そうな若い男の声が響いた。怪人は声の主を探し視線を中空に泳がせる。
「誰だ、何処にいる」
ビルの屋上に立つ若い3人の男性と1人の女性の姿。青年たちの顔には希望と覚悟の表情が見てとれた。左端に立つ男性から同じような動きで順番にメガネを装着し、全員が一斉に声を上げた。
「変身」
4人がまばゆい光に包まれ姿が消える。光が消えると赤、ピンク、黒、黄のフルボディスーツに包まれており、顔は同じ色の仮面で包まれていた。次つぎに名乗りをあげてポーズをきめる。
「メガネレッド」(ポーズ)
「メガネピンク」(ポーズ)
「メガネブラック」(ポーズ)
「メガネイエロー」(ポーズ)
『四人揃って頑強戦隊メガネレンジャー』
ちゅどーん(背後で大きな爆発)
メガネレッドのアップ。
「視界の平和を守るアイの戦士。我らはいつも人に寄り添う。いくぞ!」
4人がジャンプしタコデビルを囲んだ場面で画面が止まる。
テレビ局の会議室でノートパソコンのディスプレイで繰り広げられていた「絵コンテ」がここまでの場面だった。番組制作会社ライトスタッフの田中が紙芝居のように語りながらストーリー進行させていたのである。田中は緊張を解き放つと、小首を傾げ少し甘えるような表情で隣に立っている橋本の顔を見上げた。
ミーテイングテーブル一台と椅子だけが置かれた殺風景で狭い会議室。北側にある窓からは雑多なビルディングの姿が見て取れた。座っている田中も立っている高橋もサラリーマンらしからぬカジュアルな服装だった。もっともテレビ局の制作現場ではカジュアルな服装が標準なのでスーツ姿の方が珍しい。
苦い表情で何も言わない橋本に田中が愛想笑いを浮かべながら話かけた。
「どうですかこの新企画。頑強戦隊メガネレンジャーです。それぞれのイメージカラーをしているフレームのメガネを装着することで変身します」
橋本は女性の思わせるような高い声と口調で、苦い表情を変えないままで応えた。
「時間を無駄にしたわね。これじゃぁ戦隊モノじゃなく変態モノよ。一応上には上げてみるけど期待しないで。田中ちゃんだから応援したいけど発想が安易で貧困よねぇ。怪人も戦隊も新鮮味、フレッシュさが無いじゃない。必要なのはフレッシュ、フレッシュな感性なのよ」
田中は笑顔を崩さないまま心の中で反論した。
(今までのシリーズには無いメガネ関係のスポンサーも期待できますし、メガネを使い分けながら変装して敵地潜入とか、いろいろ使いどころがあって面白いと思うんですが、橋本ディレクターのメガネにはかなわずですか)
田中は静かにノートパソコンを閉じ
「映像と設定資料などのファイルは、橋本ディレクターあてに送っておきます。是非、前向きな御検討をお願いします」
深々と頭を下げた。
「これはこれで一旦預かるけど次の企画も準備しておいてね。番組に穴を空ける訳にはいかないんだから頼むわよ。ま、とりあえず話の続きは食事をしながらね。今夜はどんな店をセッティングしてくれているのかしら」
机の上を手早く片付けた田中が鞄を肩に掛けながら応えた。
「新鮮なタコ刺しを食わせてくれる店を見つけてあります」
橋本の表情が和らぐ。タコは橋本の大好物であることを田中も承知している。二人の声が揃った。
『タコでビール、てことね(です)』
二人は軽い足取りで会議室を後にしたが、田中は(高橋さんの墨に撒かれないようにしなきゃ)と警戒心を秘めていた。
(第1話おわり)
#創作大賞2024
#ファンタジー小説部門
#メガネレンジャー
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