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秘書の主張を聞きましょう #創作大賞感想

 高野ふゆさんの「秘書にだって主張はある。」を拝読しました。

 ネタバレはありません、安心してお読みいただけます。冒頭にあるとおり「お仕事小説」ですがファンタジー要素もあり「大人だけではなく10代後半くらいの少年少女」にも楽しめそうな印象です。

 ファンタジー要素については「剣と魔法、中世」のような内容ではなく「IFの世界」を設定に取り込んでいます。リアルな世界観をベースにしつつ「こんな世界もあるのかもしれない」と感じます。
 ただし、主人公はひたすら直向きに仕事に取り組もうとしますので、やはりお仕事小説なのだろうと思います。そして、そのお仕事とは「秘書」という、あまり身近には感じない職業です。

 周囲の人たちの思惑、社内政治、取引企業や社会的な動静に巻き込まれ、翻弄されるようにして話が展開しています。暴力的な描写や子どもたちに読ませたくないと感じるような場面はなく安心して読めますし、主人公を始めとした登場人物たちは、背景に様々な事情と思いを抱えながらも、暗く重たくなることなく、前へ前へと行動していきますので、20話7万字という文書量を一気に読ませる力があります。

 主人公が抱える背景や秘密が、主人公が望まざるような形ではありますが、他の登場人物たちと関係を重ねていくことで、化学変化を起こすように物語が進み、その心境の変化やそれぞれの台詞が、心地よい音楽を聴いているような読みやすさがあります。
 ただ、読みやすさという点では時系列を明確にし過ぎているのに時間の表記が一般的では無い書き方で戸惑うことと、視点が一人称と三人称で変わることが多く、少し安定していない印象を抱くことでしょうか。

 とは言え、この辺りの難点は、お話そのものの面白さを損なうようなことではなく、おせっかいなおっさんが、これから読む方へ「ちょっと注意してね」というレベルのお話です。通りすがりのおっさんが
「雨が降りそうだから、気をつけなよ」
という程度のお話です。何ら心配するようなレベルではありません。

 魅力的な登場人物たちに、秘書がどのような主張をしていくのか、一緒に聞いてみませんか。


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#読者にだって感想はある

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