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【創作】寛永元年の恋心

 徳川幕府の将軍が、三代目家光となった翌年1664に年号は寛永と改められ、関ヶ原から続く動乱の気配もなくなり以後約200年続く政治体制の安定期が始まる。
 盤石な幕府体制の確立に向けて外交を制限し始めた年でもあり、はじめにスペインとの国交が断絶された。

 この時期に長崎にある「高砂屋」ではスペイン由来のカストーリャボルというお菓子の販売を始めたとされている。

 さて同じ頃東北の小さな宿場町の旅籠に宿泊した仙台藩士の次男 尾形某という侍は、旅籠屋の娘に恋をした。一目惚れである。
 腕に覚えがある剣術で士官を目指して江戸での剣術修行に励んだものの、打ちのめされて帰省する途中で恋に堕ちたのである。
「田舎に帰り居候として厄介者になるだけか」
と気落ちしていた尾形にとって、子犬のように活き活きと働く娘の笑顔は太陽のように眩しく感じたようである。

 町人には無い教養と鍛え抜かれた精悍な姿をした尾形からの恋心に対して娘も前向きな姿を見せたものの、旅籠の主としてはいささか面白くない。尾形に対して条件を出した。
「うちの旅籠は甘味が売りだ。尾形さんが旅籠を継ぐならヤットウだけじゃなく、菓子作りの修行をしてくださらんか」

 尾形は考えた。
「剣術は江戸で修行をするのが本筋、菓子の腕を鍛えるなら上方か」
 考えるが早いか実家に文を出し帰省を取止め、その足で京まで上り、京の饅頭屋で三年間修行し主から独立を許された。

 旅籠に戻った尾形は当時の陸奥には無かった「こし餡」の饅頭を売り出し旅籠を繁盛させた。
 旅籠の主は尾形と娘の結婚を許すとともに、旅籠を閉め、饅頭を出す茶屋として若い二人に店を任せた。

 時代を経て徳川幕府はもう無いが、長崎生まれのカストーリャボルは「カステラ」と名を変えて、郡山で生まれた「こし餡饅頭」は「薄皮饅頭」として今に続いている。

 寛永元年の小さな恋は、見事に成就しただけでなく、子々孫々の繁栄と郡山名物を生み出してくれたようである。

※このお話はフィクションです。

【ごめんなさい】
 本日仕入れたばかりの「お話の種」を勢いのままに投稿しました。
 
 柏屋さん、勝手にお名前を使い申し訳ありまん。また「高砂屋さん」のモデルさんも許可なく登場させてすいません。
 両社から削除のお話が来たら、この投稿は、すぐに削除します。
 「それなら、最初から名前を使うな」
という御意見もあろうかと思います。
 「このくらいは良いかな」という、私の考えは「甘い」と思いますが「おかしな男」ということで、寛大な心でお赦しいただければ嬉しいです。
#何を書いても最後は宣伝
 福島太郎が描く、甘い恋のお話はこちらの3作品です。


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