甲本ヒロトという詩人の言葉に救われている
ナタリーの甲本ヒロトとカネコアヤノの対談が話題になってました。
ザ・クロマニヨンズが始まったのが2006年。CDTVでデビュー曲「タリホー」を口パク全開の悪ふざけで披露して楽しそうにしてるのを見て爆笑したのは、僕の「ロックンロール原体験」のひとつになっています。もうブルーハーツやハイロウズの倍くらいやってるんですね。
自分もひねくれ野郎なので向井秀徳みたいなひねくれおじさんのロックは共感や共鳴の感情が揺さぶられるんですが(関連記事)、甲本ヒロトは対照的にめちゃくちゃ真っ直ぐなロックンロールなので僕にとっては救いです。ねじまがった根性を優しく伸ばしてくれるアイロンみたいな存在。
バンドとしてはフェスに出てたら必ず見るくらいの温度感でしか追いかけてないんですが、いつ見てもルパン三世みたいなシルエットでピョンピョン飛び跳ねていてむちゃくちゃ元気もらえます。あるときのフェスでどしゃぶりになってみんながちょっとテンション下がってたとき、出てくるやいなや「雨でも降らなければ野外でやる意味がない!東京ドームのコンサートで雨降ったことなんかねえからな!」って叫んで、場の空気を一発で持っていったの痺れました。そういう人。
そんでステージだけじゃなく普通に喋ってるときもすげえいい。「売れてるものが良いものなら世界一のラーメンはカップラーメンになっちゃうよ」というのは有名な名言ですが、こういう風にさらっと核心を突いたことを言うのがすごい。
そしてこういう無邪気さみたいなところがすごい。60歳のおじいちゃんなのに学校の休み時間みたいな感じでしゃべれる。
何言うとんねんと思った。最高。
このインタビューで一番好きだったくだり。人間って「大人」になる過程でどうしても複雑性みたいなものを獲得してしまうんだけど、甲本ヒロトは奇跡的にそれらを回避することに成功していて、純粋な気持ちを純粋な言葉で述べるのがものすごく上手い。これは技術じゃなくて甲本ヒロトという人間が心の底から優しい人間だからだと思っていて、本気で「言葉で取り繕ってなんか意味あるん?」と考えており、だから救いになるんだと思っている。
まあそんなに真っ直ぐなのもある意味ヘンなやつであることは間違いなく、だから甲本ヒロトにマーシーをはじめとしたよき理解者とロックンロールがあったということが本当によかったと思う。そのことをヒロトが本当に嬉しがっている感じがあるのもまたいい。
忌野清志郎の葬儀で革ジャン姿のヒロトが捧げた弔辞が本当に好きで定期的に聞いています。文字起こしとかもあるけど、もじもじした喋り方とかが最高なので、知らん人いたらぜひ検索して音声で聞いてみてください。
「嘘がつけない人」という言い方があるけど、ヒロトの場合は「嘘をつかなくていい人」なのかもしれないと思う。正直に喋ることが誰も傷つけないということは実はものすごく稀有なことだ。歌詞も含めて、当たり前の言葉ですごいことを言い続けている。尊敬する詩人です。
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