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無精子症の男が漫画『胚培養士ミズイロ』を読みました

どうも種無しです。タイトルを書きながら「女の無精子症なんかないんだから『無精子症が~』とかでいいのでは」と思いつつ、なんかやっぱり「男が」って言うのが大事なような気がして最適ではない日本語を使いました。

ジェンダーレスな考えがより重視される令和の時代にあって、こんなに「男」とか「女」ってことを強調して考えることがあるとはなあ、と不妊治療に関するあれこれを見聞きしていて思います。『胚培養士ミズイロ』を読んでいても、なんかそういうことを考えてしまいました。

胚培養士は、不妊治療の現場で卵子や精子に関するあれこれをする仕事です。顕微鏡を使って卵子に精子をくっつけて「胚(受精卵)」を作って育てたりする。私が無精子症の検査でお渡しした精液も、こうした人にじっくり見られた結果「なんもおらんがな」と判定されたんだということがわかります。

掲載誌とかの兼ね合いなんでしょうが、「このマンガがすごい!2024」で“オトコ編”にランクインしたというのもなんか示唆的に感じました。1巻で最初に描かれるのは「日本の不妊治療は世界で最も成功率が低い」「不妊の原因の半数は男性」といった事実で、プライドが高く妊活に非協力的(悪気なく男とはそういうもんだと思ってる)というテンプレ的な夫がメインです。精子が見つからないと言われて「ちゃんと探したのか!」って逆ギレしたり「ハジをかくような治療はしたくない」ってふてくされたりしちゃう。

漫画では「医療だからハジとかじゃないんよ」「不妊に悩む妻はこんなに苦労しとるんよ」というのをちゃんと描いており、やっぱりまずはオトコが読むべき漫画なんじゃないかと思ってしまった。うちの妻はなんでもよく調べるタイプなので特にというのはありますが、「基本的には知ってることが書いてある漫画だった」と言ってました。僕は知らんことばっかりでした。そういうことなのかなと。

2巻から3巻にかけてはそのものずばり「無精子症でmicro-TESE(キンタマ切って精子探す手術)」をする話も出てきて、自分のことのように読みました。詳細な手術形式はまだですが、自分もなんらかのキンタマほじくりは確定しているので、進研ゼミだと思って読んだ。

自分がこうなって初めてわかったこと。「子どもを持つか持たないか」という選択は、そもそもが「子どもを持てる前提」で思考していたということに最近まで思い至りませんでした。僕は結構いろんなこと慎重に考えて石橋を叩き壊すタイプだと自負していたんですが、橋の手前の地面が崩落する可能性を考慮していなかった。そういう事例があることも知っていたのに。マジでまだまだだなと反省しています。

そんで例えば「キンタマ切ったら精子あったよー」となったとしても、僕の場合は体外受精の中でも最も手の込んだ「顕微授精」になることが確定しているので、そこから女性側が何度も注射を打ったり通院したりして採卵するというハードル、それらの顕微授精がちゃんとした胚になるかというハードル(胚培養士さんの主戦場)、それが着床するかというハードル、さらに妊娠後も高齢出産による流産・早産のリスクや染色体異常の確率上昇、出生前診断にともなう倫理問題などさまざまなハードルがあり……って考えると私のキンタマが大変お手数おかけいたしますという気になります。

逆に言えば顕微鏡レベルのことまで考えなくとも子ども生まれて元気に育ってるよーという人もいっぱいいるんだと思いますが、石橋叩き手としては顕微鏡の向こう側に目を向けるきっかけになったのはとてもよかったとも言えます。「胚培養士」なんて仕事があることも知りませんでしたが、14人に1人が体外受精で生まれている日本において、その仕事は確実に重要であり、思ったより身近である。そういう気付きを得られました。

って気付いてから「具体的にどうすんねん」というのもあると思いますので、こちらでわかる範囲の妊活に関することを簡単にまとめておきます(妻に教えてもらいました)。どなたかのご参考になれば幸いです。

妊活検診

将来的に子を授かる可能性がある全人類が行っておいたほうがいい検診。女性は採血によるホルモン検査、風疹麻疹の抗体検査、性病検査、子宮頸がんの検査などのセット、男性は採血と精液検査のみといった感じ(クリニックごとに違う)。

大きな手間もなく「わりと問題なさそうだよー」という確認ができるので、健康診断くらいの気軽さで行ってみるのがおすすめ。女性の場合は卵子の数の目安が出るので年齢的なリミットなどを考えるのにも役立つ。僕はこれで無精子症が判明しました。

一般不妊治療(不妊検査)

「不妊治療」といってもまずは精密検査からなのでそんなに身構えず受けてOK。男女ともに妊活検診より詳細な検査ができる。月経異常がある、半年以上タイミングを考えて子作りをしているけど授からない、今すぐ子どもがほしい、など既に不安や理由がある人は妊活検診を飛ばしていきなりこちらからでもいい。

男女ともに問題がなければ自然妊娠に関するアドバイス(タイミング法など)や、ホルモン療法などからスタートになるので、いきなり体外受精とかになるわけでもない。「子どもほしい相談室」だと思って行ってみるといい。

晩婚、高齢出産が増えている時代だけど、「そろそろ子どもを」と思ってから授かるまで何年もかかる場合もあるし、高齢であるほどリスクは増える。今は子どもを持ちたいという願望や予定がない人も、先に妊活検診だけでも受けておくのがおすすめ。

東京では法律婚・事実婚の夫婦が一緒に検査に行くと助成金が出ます。


ためになる情報をまとめたところで、以下は余談です。先日、2回目の精液検査で無精子症が確定し今後の治療方針考えるためのホルモン検査を受けたんですが、その結果が数日後に出ます。なんか色々考えてるんですが、自分でもまだ整理しきれていない現段階の心境などを書き留めてみます。

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