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開高健ノンフィクション賞『MOCT』を読んで。

十何年ぶりに、桑野塾に参加してきました。今回は開高健ノンフィクション賞を受賞した『MOCT「ソ連」を伝えたモスクワ放送の日本人』(集英社、2023)の著者、青島顕さんが講演するということで、本書を面白く読んだ一読者として、生の話を聞いてみたくて行くことに。

MOCT(モスト)は、ロシア語で「橋」「架け橋」を意味します。個人的にも、一時期、ロシアと日本の文化交流の架け橋になりたいと思っていた私としては、今なお嫌われ続けている国の情報を公式の国際放送で伝える際の心情とか、メンタルの保ち方やスタンスの取り方について知りたいと思った。本書にはそんな方々の記録を温かい視線で淡々と描写している。ちょっと驚いたのは、登場人物それぞれに共通する心情として、皆んなロシアを嫌ってないことだった。著書の青島さんも、新聞記者らしく中立公正(青島さんは中立より独立が大事と言っていたけど)の立場で、書いてらっしゃると思うが、あの国への嫌悪が(一般論を除くと)一切書かれていなくて、むしろ少年期のモスクワ放送への好奇心を何十年も持ち続け、偶然を味方につけて、点と点をつないでいった結果の奇跡的な書籍になったと感じた。青島さんも含め、本書に登場する人々は、本当に本書のタイトル通り、結果的にではあれ、日露文化交流の架け橋になったのではないか、と思った。

青島さんにサインをもらうとき、少しお話ししたのだが、どうやら10年くらい前に一度お会いしたことがあったらしい。私はすっかり忘れてしまっていたんですが、確かにロシア関係の交流会で毎日新聞の記者と名刺交換したことがあった。その名刺はどこかに行ってしまって忘れていたのだが、あの時の記者さんだったのかと思い出して、申し訳ない気持ちになった(私がロシア文化交流の架け橋になろうと頑張っていた頃、ほんとにただの若造で、どこにも所属先がない根無草だったので、周囲の出来上がった人たちにコンプレックスを感じていた笑)。

とにかく、久々の桑野塾に参加してよかった!
桑野隆先生にも会えたし、ノンフィクション作家の大島幹雄さんにもオンラインを除くと十何年ぶり?に再会できた。元ナウカの宮本さんにも覚えてもらってて嬉しかった。

また、興味本位でもいいから、参加してみたいと思う。ちなみに桑野塾はロシアの哲学者、思想家として知られるミハイルバフチンの研究者として知られる桑野隆先生が主宰し、世話人の大島さんらが2009年から定期的に催している「広場」「対話」「ポリフォニー」の交流の場です。いつも早稲田大学の本部キャンパスや文学部キャンパスの一室を借りてやっているようです。研究者に限らず、参加できます。

https://lnkd.in/gYP9TpX3

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