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【NPB】進化する野球場 ボールパーク化構想で変わる観戦スタイル 【日本国内の事例2-part1 MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島(広島東洋カープ)】

こんにちは。たろべいです。

今回はNPBセントラルリーグに所属している広島東洋カープのMAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島について取り上げます。広島東洋カープといえば、2014年度の新語・流行語大賞として「カープ女子」が候補として挙げられる程注目を集めました。なぜそこまで熱狂的になったのか。チームが強かったからという理由だけなのでしょうか。その背景をボールパークの視点から考えてみます。

◆マツダスタジアムの概要

MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島(以下略:マツダスタジアム)は2009年から広島東洋カープの本拠地として使用されている。マツダスタジアムは命名権上の名称であり、名称は「広島市民球場」である。マツダスタジアムは広島県広島市にあり、広島駅から徒歩約10分で行くことができる。球場の外装と内装は共にチームカラーの赤色を基調としている。
また、マツダスタジアム公式サイトはスタジアム概要について次のように述べている。グラウンドの開放感、通風、街との一体感を確保するため、北側のJR側へ大きく開く形態としている。また、球場の楽しさを新幹線などJR車窓からも感じることが可能であり、1階観客席の最後部に、幅が広く、段差のないコンコースを配置している。また、コンコースからグラウンドを眺めながら、球場を周回することが可能である。ダイナミックなプレーを堪能できるよう、砂かぶり席、パーティーフロア、テラスシート、パフォーマンスシートなど多彩な観客席を設け、様々な観戦スタイルが可能。観客席は、大リーグ球場並みの横幅50cm、奥行き85cmを確保しており、ゆったりと野球観戦することができる。更に、十分な車いすスペース、オストメイト対応型多目的トイレなどを設置しており、障害者・高齢者・小さな子ども連れの方など、誰もが利用しやすく、ユニバーサルデザインに配慮した施設となっている(マツダスタジアム スタジアム概要)。                  引用:http://www.mazdastadium.jp/outline/index.htmlを元に筆者が編集。

◆NPB 観客動員数推移

画像1 んpb

   2005-2019 NPB セントラルリーグ 観客動員数推移
(出典)https://npb.jp/statistics/ を元に筆者が作成 

上記の図から、2009年度にかけて広島東洋カープ(以下カープと略す)の観客動員数が急激に上昇しており、一時減少後に横ばい状態になったものの、2014年度からは再度上昇していることがわかる。この背景には、2009年度「MAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島」を新しい本拠地球場として使用されている事も理由の一つとして挙げられるが、どのような関係性があるのだろうか。球場に着目することで観客動員数が上昇した秘訣とは何かを考察してみる。

◆マツダスタジアム設立によるボールパークと街の変化

マツダスタジアムが開場された2009年以降から、三井物産はサービスのサポートに携わっている。マツダスタジアムの建設プロジェクトを2005年からサポートし、MLBの球場運営を参考にフードサービス、スポンサーシップマーケティング、清掃業務を受託することで、これまでの日本の球場にはなかった新たなサービスを支え続けている。フードサービスでは球場を周回できるコンコースを活かし、三井物産によって共同出資されたエームサービス株式会社が一括運営している場内29の売店でフードサービスを提供している(三井物産)。鈴木秀男のプロ野球のサービスに関する調査によると、球場のフード商品の順位は2020年度に2位、2019年度と2018年度は1位としてスコアが検定されている(鈴木秀男_球場に関する項目の評価とランキング_2020)。また、マツダスタジアムには寝ころんだ状態で観戦ができる「寝ソベリア」や、バーベキューを楽しむ事ができる「びっくりテラス」というユニークな観戦席を提供している。これらの席では野球場での非日常的な経験ができ、バーベキューを楽しめる「びっくりテラス」のスポンサーである大手食品メーカーは、商品を実際に提供し、食事を楽しめる事で販売促進に役立てている(三井物産)。また、ベイスターズと同様にチケットを持っていない人でも球場の雰囲気を楽しむ事ができる「ただ見エリア」というスペースがレフトスタンドに開放されており、球場の周りを歩く人にとって野球観戦を生活の一部として身近に感じる事ができるのではないかと考えられる。

球場周辺への取り組みとして三井不動産株式会社は「スポーツの感動があふれる街」、「球場とともに進化する街」を目指す大規模複合開発を目指し、「広島ボールパークタウン」整備事業を推進している。この事業では、大型商業施設であるコストコを始め、健康で快適なライフスタイルを提供するスポーツクラブ、プロ野球の感動と興奮を身近に感じられるマンションが建設された。プロ野球が開催されない期間を含めて賑わいを創出する「非日常的空間」を整備し、「街の新しい機能付与」や「新たなライフシーンの発信」などを実現すると述べている(三井不動産)。2016年度には広島の交通手段の1つである路面電車で、路面電車内にマツダスタジアムで使える生ビール1杯無料クーポンをつり革の代わりとして吊り下げる「つり革クーポン」という企画が行われた(旅やか広島)。マツダスタジアムを中心として商業施設が建設され、広島駅を経由する電車の車窓からは球場内が見える。地域住民から広島に訪れた人々に対してボールパークのある街へと変化し続けており、今後もマツダスタジアムを中心としたまちづくりが進行されるのではないかと考えられる。

◆ボールパーク化構想が与えた顧客総合満足度の向上

広島では球場内の飲食サービスを充実させ、球場外では球場に寄りたくなる様々な取り組みがされている事がわかった。それらの取り組みがどのようにファンの行動意識に影響しているのか、今後のボールパーク構想について考える。

画像2 サービス品質の影響度

サービス品質の影響度(2020)
(出典)http://lab.ae.keio.ac.jp/~hsuzuki/baseball0901/pdf2020/2_2file.pdf  
プロ野球チームの顧客満足度指数化モデルの推定結果と指数化の方法を元に筆者が編集。

上記の図は、プロ野球チームの顧客満足度が鈴木秀男氏によって指数化されたグラフである。グラフでは、ファンサービス及び地域貢献が全体の約3割5分を占めており、顧客満足度に与える影響が大きいことがわかる。ファンサービス及び地域貢献が与える影響について、「ファンサービス、球場設備、地域貢献、情報媒体など、全体的にそのチームが提供するサービスの品質はどうですか。」という質問による2020年度1月下旬に行われた調査結果では、サービスの品質に対して満足している上位5球団(1位ソフトバンク、2位広島、3位西武、4位横浜DeNA、5位楽天)のうち、4球団(1位ソフトバンク、2位広島、3位西武、4位横浜DeNA、5位巨人、6位楽天)が総合的な満足度の調査結果でも上位に位置している事から、サービス品質の影響度においてファンサービス及び地域貢献が大きな影響を与えていることがわかった。


part1はここまで。次回は球団のファンサービス・地域貢献がどのような効果をもたらしたのかを考察します。


-引用-

・NPB 統計データ
https://npb.jp/statistics/
・マツダスタジアム スタジアム概要
http://www.mazdastadium.jp/outline/index.html
・三井物産 日本一のボールパークを目指す取り組みを支える  (2018/10)
https://www.mitsui.com/jp/ja/innovation/business/ballpark/index.htmlhttps://www.mitsui.com/jp/ja/innovation/business/ballpark/index.html
・鈴木秀男『球場』を構成する項目における各チームの評価平均値とランキング (2020)
http://lab.ae.keio.ac.jp/~hsuzuki/baseball0901/pdf2020/6_1file.pdf
・三井不動産「マツダスタジアム」に隣接する大規模複合開発「広島ボールパークタウン」 (2014/02/26)
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2014/0226/               ・旅やか広島【広島カープ×路面電車】つり革に生ビール無料券が  (2016/06/26)https://kanko-h.com/info/index.php?p=2832&cat=10



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