同期が、会社を辞めた。

同期が、会社を辞めた。

同期といっても、お互いに転職組で、入社時期には一か月の違いがある。でも同じチームで、入社時期が一番近く、新しいロールに対してバックグラウンドが白紙という共通項があり、何より気が合った。ずっと同期と思ってきたし、ライバルのようにも思っていた。同期というのは幼馴染とも、中高のクラスメイトとも、大学の友人とも異なる、不思議な関係だ。しいて言えば塾の友達に近い。同じ目的を持ち、同じ環境で成長しながら、ライバル関係にもある。

会社を辞めたといっても、ポジティブな転職だ。公的機関にいた彼は、外資系のこの会社に随分と驚いていたと思う。はじめの頃、前職の感覚で百枚以上の資料を印刷して机にドカッとおいて周りに驚かれていたとき、彼はそのことにもっと驚いていたことだろう。新しいロールで力をつけて影響力も発揮し始めたころ、次のステップとして、彼はより競争の激しいところに身を置くことにした。ステップアップと言っていい。素晴らしいチャレンジで、腕が疲れるほどの拍手を贈りたい。

彼に会社を辞めると聞かされたあとの半日間、身体が、心が、浮遊するような感覚が続いた。そのフワフワは、デジャブだった。

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前職で、その時は転職同日入社の、同じ新設の部署に入る同期が6人組だったのだが、そのうちの一人が部署を異動すると聞いた後と似た感覚だった。自動的に異動が起きる職場ではなく、空いたポストに対して挙手して面接を受け、先方のマネージャーに認められての異動である。彼女は同期の中でも、学年も、川崎市で育ったことも同じで、三か月間の研修の間、帰り道を共にしていた。バカなことも、愚痴も、楽しいことも、相談も、色々なことを話した。研修が終わってお互いに担当企業ができてからも、たまに一緒に帰っていた。お互いにパートナーがいて、きっと恋愛が生まれるような関係ではなかった。

彼女が異動してからしばらく、僕はフワフワしていた。落ち着いたと思っても、不意にその浮遊感は襲ってきた。しばらくして、僕は気づいた。あ、彼女のことをこんなに好きだったのか、と。それはきっとLoveではなくて、大きなLikeではあるのだけれど、思っていたよりも一回りも、二回りも大きなものだった。それに気づいたら、フワフワはなくなっていった。

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さて、今の会社を辞めた彼。彼にはきっと、思っていたよりも一回りも、二回りも、僕は依存していたのだと思う。似た課題を持っていて、それをなかなか克服できないところも似ていて、競うというよりなれ合いに近い依存の関係になってしまっていた。お互いに、それには気づいていた。それを脱しようとする試みも、二人ではじめていた。その一方で、彼は別の道を探し、選んだ。それもいい選択だと思う。

彼の転職によって発生したフワフワ。浮遊しているということは、上向きの力が働いているということだ。この力のベクトルを前向きにして、自分のエンジンにしないといけない。前職でのフワフワは、ただしぼむのを待つだけになってしまい、そのエネルギーを活用することはできなかった。そう、きっとフワフワはエネルギーなのだ。どうせなら、使ってみる。

同期が、会社を辞めた。さようなら。僕も、前に進むね。

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