#3 新型コロナウイルスとメンタルヘルス ー5つのストレスと5つの視点
この記事の対象の方
・自粛生活を送っている方
・経済的不安を抱えている方
お悩み・ニーズ
・自粛生活の中でメンタルヘルスを維持するためにはどうすればよいか?
・こころの健康を保つために必要なことは何か?
災害ストレスに対するこころのケアについて
新型コロナウイルスによるストレスを5つ(経済・家族・生活・感染・喪失)を、災害後に必要なこころのケアの5つの視点(安全感・落ち着くこと・効力感・つながり・希望:Hobfoll et.al.,2007)から、メンタルヘルスを保つための対処法をお話ししたいと思います。
新型コロナウイルスが生み出す5つのストレス
新型コロナウイルスのパンデミック(感染爆発)は自然災害です。
私たちの生活は一変しました。
これまでも人類は天然痘やペスト、新型インフルエンザ、新興感染症などのパンデミックを経験してきました。
私たちは、試練に立ち向かっている状態だといえます。
この自然災害によって、私たちはさまざまなストレスを抱えることになっています。そのストレスを5つ挙げていきます。
1)経済的活動の停滞による先行き不安
経済活動の停止は、私たちに経済的な困窮をひきこします。また、仕事を失うかもしれない不安を抱えます。
すでに仕事を失った方もおられるでしょう。
経済的な不安は重大なメンタルヘルスの低下をもたらす可能性があります。
問題となるのは、うつ病(気分障害)です。
うつ病は自殺のリスクをはらみます。報道させることはないですが、増加していると聞きます。
報道されないのは、自殺の報道は自殺者を増加させるからです(ウェルテル効果)。
2)家庭での問題
また、家庭では子供が学校に行かずに家に常にいなければならない状況を生み出します。
これまで家に居場所がない子どもはDV(家庭内暴力)や虐待を受けるリスクを抱えることになります。
また、望まない妊娠の増加も報道されています。
閉鎖空間がもたらすこころの問題が露呈しています。
3)生活習慣の変化による問題
オンライン授業や在宅ワークなど、これまでとは異なる生活様式への適応が求められます。
子どものいる中で仕事をすることは、業務効率の悪化を招きます。
また、プライベートと仕事の線引きを難しくします。
仕事を終えることができず、家庭内で過重労働となり、深刻なメンタルヘルスの問題を引き起こす事例もあります。
仕事をしていても、子どもを見てないのか!と叱責されます。
会社からオンライン状態にするように強制したり、部屋の中をウェブカメラからのぞき見て、家庭の様子を指摘するようなハラスメント(嫌がらせ)も起きています。
4)感染時の恐怖
自分がもし感染したらどうなるのでしょうか。自分が人に感染させたとしら、どうしたらいいのでしょうか。自分の責任を感じない人はいないでしょう。
自分が感染させられたら、どういう気持ちになればいいのでしょうか。
感染した人をどのように迎える必要があるのでしょうか。他人のせいと思う気持ちが現れるのは自然ですが、それが差別につながるのは間違っています。
5)大切な人を喪失する
コロナウイルスで大切な人を失うこともあります。感染者は通常のお別れができません。なくなる前に合うことは許されず、お骨になるのを家で待つことしかできないのです。
喪失は心身のバランスに重大な影響を与えます。一般的には自然に回復していきますが、一部、複雑性悲嘆と呼ばれる専門的な支援が必要になる場合もあります。
メンタルヘルスに必要な5つの視点
それでは、このストレスの状況の中で、どのようにすればこころの健康を維持できるかについて、5つの視点(Hobfoll et.al.,2007)からお話ししたいと思います。
1)安全感を確保しよう
まず、必要なことは安全を確保することです。自分の存在をおびやかす状態であれば、その脅威を排除する必要があります。
一番の脅威はウイルスです。
まず、どのようにウイルスに向き合う必要があるのかを学び、それにあわせた生活をすることが求められます。
合言葉の3密(密集・密接・密室)を避けて、そして手洗いうがい、規則正しい生活をして適度な運動、しっかり食事を取り、免疫力を高めることができれば、ことさらに不安を感じる必要はありません。これが安全感になります。
経済的な不安に関しては、行政的な支援などの情報を手に入れて、実際に行動していきましょう。悲観的になるのではなく、今取り組めることに注力します。
悲観的な気持ちになると、ネガティブな情報ばかり集めてより気分が落ち込み、何も自分にはできないと決めつけて行動できなくなってしまいます。
2)落ち着くこと
人は正しい判断をするためには、冷静である必要があります。過度に興奮していると、判断を誤ることがあります。
人は危機を感じていると、過覚醒の状態になります。
刺激に敏感になり、興奮しやすいのです。ニュースをあまり見すぎると、冷静ではおれなくなるのです。また、とくにワイドショーは不安をあおる傾向があるので、不安も高まります。
出処が明らかになった情報を入手して、冷静に対応することが大切です。
買い占めに走る心理は、落ち着きを失った不安からくる行動で、冷静を欠いています。
購入しても本当の安心感は得られません。
3)自分の力と周りの人の協力
自分にできることがあると確信することです。たとえば、なるべく家にいるという努力です。
自分だけなら外に出ても大丈夫、と考えるのではなく、自分ができることに価値を見出してください。
その努力は周りにいる人たちと協力し合うことにつながります。
自粛要請の結果、街に人は少なくなり、感染のリスクを低下させることに成功しています。
これは、みんなの協力のたまものです。
それぞれ個人の努力の結果は、みんなの協力を生み出します。
自分でコントロールできることとコントロールできないことを分けることも大切です。コントロールできないことに、不安を感じたり無力感を感じる必要はありません。
4)つながり(きずな)
つながりとは、切れないように、孤立しないように努力することを意味しています。孤立は、人間第一の不幸と言われています。
東日本大震災の時に私たちは、絆(きずな)の必要性を感じることができました。
私たちは、この状況で感じたことや体験をお互いに話し合い、共感し合うことで、精神的に支え合うことができます。
さまざまなSNSやZOOMなど、実際に会わなくてもコミュニケーションできるツールを私たちはたくさん持っています。
子どもは特に気持ちを表現しにくいところがあるので、大人が声をかけてあげる必要があります。
5)希望
最後は希望です。
これまでもさまざまな困難を人類は乗り越えてきました。
感染の恐怖、学びの遅れや経済的な不安はあります。その存在が消してなくなることはありません。
しかし、逆に希望がないわけではありません。
医療従事者はコロナと最前線で戦ってくれています。また、治療薬の研究者も休みなくワクチンや新薬の開発、有効な薬の発見に取り組んでいます。
感謝する気持ちを自然に持てるはずです。
新型コロナウイルスは、経済主義的社会の弱さ、都市化の脆弱性、働き方、学び方の変化など、さまざまな課題をあぶりだしています。
が、それを克服する新しい技術が次々と生まれています。
これまでのパンデミックも世界を大きく変えました。
まさに、今、世界が歴史的に変化しようとしています。
私たちはそれを目撃しているのです。
そこには希望があります。
まとめ:災害後のこころのケアに必要なこと
・安全感:正しい情報から学び実行する
・落ち着くこと:冷静な判断をする
・自分の力と周りの人の協力:自分のできることをする
・つながり(きずな):コミュニケーションを取る
・希望:コロナを克服する世界の努力に感謝し、いずれ到来する次の世界に目を向ける
さまざまなストレスを自覚し、この5つケアを意識しながら生活することによって、メンタルヘルスを維持することができると思います。
心がしんどくなったときに、確認してみてください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献:冨永良喜(2020)『第2回新型コロナ研修・情報交換会まとめ』
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