4年前、スーパーマーケットでの後悔

4年前

スーパーマーケットでチンピラに肘鉄を

食らわした

そのときに、刑務所に行っておいたほうがよかったかもしれない

検察官は

はなっからおれを起訴するつもりでいた

「絡まれたからって近づかなくてもよかったんじゃないですか?」

じゃどうすりゃよかったんだ

客であるバア様たちはみんなおれを見ていた

おれは昼飯を買いに来ていただけだ

派手な色の服を着たチンピラは声を張り上げる

「おい、そこのおまえ、気持ちが悪いおまえだよ!」

四十路の美人な店員もおれを見る

だからやつの耳にぶら下がった

イヤホンを引っこ抜き

肘鉄を……

おれはその方が面白いと思ったが

すぐに警察がやってきて

チンピラはベンチに座り

事情聴取を受けた

捕まらない方法は

チンピラに莫大な金を払うのみ

おれは金がなかったし

おれをいつも助けてくれる友だちも

もちろん金がなかった

検察官は正義にも悪にも 

興味がなく

仕事をするために生まれてきた子鹿のような目をしていた

おれは刑務所に入ろうとしたが

親が

特に母親がそれを許さなかった

「あんた人生をナメるんじゃないよ」

「あんたはなにもわかっちゃいない、なにひとつ!」

別に、ナメていたつもりはなかった

人生にアバヨする手前だっただけで

ナメてなどいなかった

結局、親に借金して

事なきを得たが

そのときに刑務所に入って死んでいれば

どれだけ楽だったかを

想像しない日はない

警察は嫌いだが

捕まることはそう悪い気はしないようにも思える

とにかく

愛する女にも

「あんたは人をナメている」

「あんたは人を見下している」

「あんたは偽善者」

「あんたは男らしくない」

と言われ

もう、二度と人の意見に耳をかさないと決め

おれは借金を返し

今度引っ越す

新しい門出

次はチンピラを二度と歩けないように袋叩きにして

ひっそり死んでやる




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