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未来の建設業を考える:「デザイン思考の時代へ」(2021年6月9日)

銀行店舗に人がいない

 最近銀行に行くと、銀行店舗に人がいないことに驚く。コロナの影響もあるが、昔であれば、銀行でのやり取りはその日の大きなイベントで、待ち時間が長い大変な仕事であったはず。
 ところが、いまや、単純な入出金や振込であれば、ATMやネットバンキングで処理できるし、近くのコンビニでも可能だ。オンライン化が進むことで、店舗が消費者の近くにある必要は薄れ、店舗数も減少しつづける。残す店舗でも、銀行なのに現金を扱わないコンサルティング主体の店舗へと変わってきている。
 そもそもNYマンハッタンでも、銀行店舗をほとんどみかけることがなくなった。日本でも、無店舗の銀行、いわゆるインターネット銀行のなかには1千万口座を超える銀行も出てくるほどだ。

リアル店舗のあり方も大きく変化

 このような環境のなか、リアル店舗のあり方も大きく変化している。りそなグループの「クイックナビ」、西日本シティ銀行などの「税公金収納機」などに代表されるように、キオスク型専用端末を設置し、来店客自ら従前のATMで処理できないものを、行員ではなくロビーに設置された専用端末で事務処理を行う「0線化」だ。
 一方で、わざわざ来店されたお客さまをとの接点を高め、取引機会、収益機会の拡大につなげるため、ローン担当者や管理者がロビーに常駐して接客にあたり、店舗自体も相談型のブースに変えたり、証券や信託銀行、時には喫茶店と同居するなどして、利便性を高めている。
 ITや社会環境の変化で、いわゆる「従来のリアルな場所・施設」のありようが大きく変わる。、今日この頃だ。

「リアルオフィスのあり方」の変化

 同様の現象は、新型コロナによる「リアルオフィスのあり方」の変化でも見てとれる。
 民間シンクタンク「ザイマックス総研」の調べ(2021年5月)によれば、コロナ危機で出社率40%未満の企業が3割に達し、コロナ後でも75%の企業は、継続的にテレワークを進める意向との調査結果が出ている。テレワークの場所も、自宅だけではなく、サテライトオフィスリモート会議室用ブースなどの活用を6割強の企業がコロナ後でも進めるそうだ。
 コロナ後のオフィスは、従来のように朝9時に出勤して、会社で働き、夕方5時に帰宅するこれまでのパターンから、自由な時間に、目的を持って会社に行き、オフィスを出会いや創造を高める場として活用するように変わるはずだ。
 リアルオフィスがいままでと大きくその機能や役割を変えようとしている。
 銀行も、オフィスも、施設の利用目的が大きく変化することに、建築はどう対応すればよいのだろうか。

デザイン思考(Design Thinking)

 そこで参考にしたいのが、ITにおける、「デザイン思考(Design Thinking)」という考え方だ。デザイン思考とは、単純に良い設計をするとか、良い意匠にするだけでなく、いままでにない「新たな価値」や「新たなビジネス」を生み出すことをいう。
 まさに、施設建設時点から、施設利用の目的、顧客ニーズの大きな変化をみすえ、最初から多様なニーズに対応でき、新たな価値を想像するフレキシビリティを持った設計、施設建設が求められていると思う。
 デザイン思考の活用で、建設業界の新たなフィールドの拡大につなげたいものだ。

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