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「建設・不動産のデジタル化 〜FMBIMの活⽤〜」:その5 4. デジタルデータの活⽤はあらゆる分野で進む


4. デジタルデータの活⽤はあらゆる分野で進む

リアルな都市をコンピューター上で同じように可視化する「デジタルツイン」技術。センサー、AI(⼈⼯知能)、ロボティクス、クラウド、5G(第 5 世代移動通信システム)など最先端の技術を統合したものだ。現実の都市問題の解決に、デジタルツインの活用が始まっている。

ビル管理でも、デジタルツインで作られたコンピューター上のビルにおいて、空調の改修や環境改善を図るようなシミュレーションを⾏い、そこでの結果をもとに、実際のビルを改修するなども、これに該当する。

現実の都市環境を正確に把握するためには、都市全体で発⽣するあらゆるデータを補⾜し分析する必要がある。

その中で、注⽬すべきはセンサーの普及だ。

世界の IoT デバイスの数は 390 億台と、わずか 5 年でその数が倍増している。⾃動⾞での利⽤は⾔うまでもなく、スマートシティが拡⼤する産業⽤途(⼯場、インフラ、物流)では、前年度⽐で 30%も増加している。2022 年には「トリリオン・センサー時代」を迎えると⾔われ、1 兆個を超える IoT センサーが出荷されるという予測があるほどだ。

これらからもたらされる多くの「デジタルデータ」が、社会のデジタルツインを加速する。

製造業では、設計から製造、運営、メンテナンスまでの設計、製造、利⽤の⼀連のプロセスを⼀元的に管理する共有プラットフォーム「PLM(Product Lifecycle Management)」を導⼊している。モノをライフサイクル全体で運営管理しようとする動きだ。

有名なところで⾔えば、GE やロールスロイスの航空機エンジン。エンジンそのものは売らない。エンジンの出⼒に応じて課⾦するサブスクリプションモデル(課⾦制)へビジネスの中⼼を移⾏している。各種センサーによりエンジンの実際の稼働状況をセンサーで把握し、最適なメンテナンスのタイミングを割り出し、トラブル回避につなげている。さらに、エンジンから得られたデータに基づき、エネルギー消費を最⼩化する最適な操縦について航空会社へコンサルするなど、周辺ビジネスへも進出している。

もっともデジタルツインを活⽤できているのは、⾃動⾞の衝突試験だ。実物実験がなくても、シミュレーションできることは、事業者開発を画期的に変えた。

ブリヂストンでは、売り切り型のタイヤ販売から、タイヤの摩耗具合を IoT センサーで把握し、事前にタイヤ交換やタイヤの表⾯を貼り替える「リトレッド」をビジネスの中⼼に据えようとしている。

コマツは、コムトラックスで、建設機械のデジタルツインを実現した。この技術をさらに進め、トラックやパワーショベルなどの機器の⾃動化、⾃律化に加え、⽇々の最適な施⼯計画作成、⽇々のタスクの⾃動作成、無⼈化施⼯などの作業の⾃動化も⾒据え、安全で⽣産性の⾼い、スマートでクリーンな未来の現場を志向している。

BIMとIoTセンサーの組み合わせで、コロナウイルスが拡散する空調シミュレーションをバーチャル世界で実現し、それを現実のオフィス空間での処置に活かすことなどもすでに実現可能な技術だ。

デジタルツインでできる世界は広がる。⾃動⾞衝突試験に⾒られるように、仮想空間で実空間の出来事をシミュレーションし、より実社会が安全で快適な空間になることに期待したいものだ。


図 11  世界の IoT デバイス数の推移及び予測

4.1 IoT センサーを活⽤したビルのエネルギー管理

不動産の収益性を改善する最も効果的な⽅法は、エネルギーコストの削減にある。ここでも不動産デジタル化技術が応⽤されている。

⼤きくは2つの⽅法が採⽤されている。

ひとつは、エネルギーの⾒える化を徹底すること、もうひとつは、センサーにより最新のエネルギーデータを取得し、その分析により、⼤幅なエネルギーコストの削減につなげること。

Enertiv という NY の不動産テック企業では、不動産管理におけるエネルギー管理をデジタル化する、たとえば、発電機や変電設備等の管理マニュアルをデジタル化したり、⽇常点検をスマートフォンでチェックリストとして、簡便化したりしている。さらには、それらの利⽤データをPC、スマホなどでチェックすることで、エネルギー消費の多い設備を事前に交換したり、維持修繕したりするなど、最善のエネルギー管理を実現している。すべてのデータがデジタル化されているので、ダッシュボードとして全体のデータを一覧でき、現場も、経営管理層も、すべての階層で情報の共有化も図られるような仕組みを構築している。

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