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未来の建設業を考える:「建築デザイン評価の必要性」

不動産価値を評価する時代

 SPC(特定・特別目的会社)や開発型信託など、不動産収益に基づき再開発事業が増加しつつある。これは、現在の不動産鑑定評価がキャピタルゲインを中心とした土地評価から、土地・建物などの不動産から生じる毎期の収益、インカムゲインをベースにDCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法などを駆使して、不動産価値を評価する時代になってきたためであると言われている。

必ずしもデザインの質の高さが評価されているわけではない

 不動産も「保有」から利回りにより「投資」を行う時代になったと言えよう。しかし、現在の不動産鑑定評価基準(国土交通省)を見ると、「設計、設備などの機能性」があるだけで、残念ながら、必ずしもデザインの質の高さが評価されているわけではない。
 つまり、デザインが価値を生むものとして明確な評価を受けていない。

社会的に受け入れられるデザイン

 いまこそ、デザインの質についても、市場で評価される時代へと変化させることが必要ではなかろうか。これまで建設業界として内部から評価することはしていたが、必ずしもそれが社会的に大きな反響を呼ぶことにつながっていない。建設業界として、市場の失敗を矯正し豊かな未来への道筋をつけるために、文化レベルを向上させるための啓蒙的な活動として、業界独自の評価も必要なことであろう。
 しかし、最終的にはデザインというサービスが社会的に一定の価値として評価され、社会全体がデザインの価値を認めることが重要ではなかろうか。
 その意昧でも、現在、プロバイダー側の評価に頼っている状態から、発注者や社会的に受け入れられるデザインの質についての評価システムの創造が必要であると思う。

英国のDQI(デザインークオリティー・インディケーター)

 英国では1999年からDQI(デザインークオリティー・インディケーター)と呼ばれるデザイン評価システムを導入している。建設プロセスの各段階においてデザインの評価とともに、発注者の評価への参加により建設プロジェクトの目的の明確化など、多様な効果をもたらし、プロジェクトの改善とデザインの質の向上に成功している。

「べター・パブリックービルディング」

 また英国政府も、ブレア首相自ら「べター・パブリックービルディング」と題して、ローコストがベスト、ライフーサイクルーコストより初期投資といった古いカルチャーを払拭し、公共建築工事において、発注者としてデザインチャンピオンを創造することや、デザイン品質を確保するために十分な時間をかけることなどを求めるガイドラインを出している。
 一貫して、より良いデザインが、国民に、より高い利益をもたらすというスタンスを取り続けている。

建築デザインの質

 日本においても、デザインの質について、発注者側も含めた全体評価がなされるシステムを早急に導入することで、より良いデザインが社会全体の価値として認められ、さらなるデザインの質の向上につながることに期待したい。
 カウボーイ・ビルダーズとは、不良施工業者を指した英語であるが、カウボーイ・アーキテクトが生まれないためにも、きちんとした評価システムの導入が求められよう。

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