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未来の建設業を考える:「最先端の重要性」(2022年10月7日)

TSMC(台湾積体電路製造)

 世界最大の半導体メーカーTSMC(台湾積体電路製造)が1兆円をかけて、熊本に半導体工場を建設している。一部報道によれば、工事を請負っている鹿島の話として「普通なら10年かかる工期を2年で建設する」神業的な建設工事だそうだ。
 ぜひとも、日本の建設業の得意とする工期内完成させる高いマネジメント能力で、実力を見せつけて欲しいものだ。

世界の半導体市場

 ところで、世界の半導体市場は、かつて日本の独断場であったが、いまや技術力でも、生産力でも、台湾、韓国企業に圧倒されている。
 アップルやエヌビディアなどの設計に基づき、半導体の製造受託を行っている企業をファウンドリ(ファブリケーション・ファクトリーの略)企業と言うが、世界のファウンドリ市場で、1位はTSMC(台湾)55%、2位サムスン(韓国)17%、3位UMC(台湾)7%だ。

ナノレベルでの競争

 この半導体も、ナノレベルでの競争が行われている。ナノレベルの回路とは、「電気回路の細さ」をさす。たとえて言えば、「東京ディズニーランドの敷地に、1ミリメートルの道を描くような技術」だそうだ。いかに小さく機能の高い半導体を生み出すかが、競争、利益の源泉だ。昨年来の半導体の不足は、おもに自動車分野、空調機器、電気機器、家電などで顕著となったが、ここで用いられている半導体は28ナノメートル以上のいわゆる「汎用品で、儲からない半導体」だ。半導体メーカーの主力製品ではなく、需要増に応じた生産ラインの増強が行われなかったことも不足になった要因であると言われている。TSMCの売上げや利益の半分はスマホ対応の5ナノレベルの最先端半導体だ。すでにTSMCの営業利益は1兆円を超える。最先端の半導体は、まさに金のコメになっている。
 いま台湾では、総額16兆円もの巨額投資で、5ナノや3ナノと言われる最先端の半導体工場建設が、20か所近く同時期に進んでいる。一方、日本では、ルネサスエレクトロニクスが40ナノで、新設されるTSMC熊本工場も20ナノレベルの工場だそうだ。
 世界の半導体市場はこの10年で1.4倍にまで拡大し、現在は63兆円の市場規模まで大きくなっている。さらに、各種IoTセンサーの活用や、自動運転技術、スマートホーム、スマートビル、スマートシティなどの具現化などもあり最先端半導体ニーズはさらに高まり、2030年には100兆円市場までに拡大すると予測されている。

どうして、日本の半導体技術が遅れることとなったのか?

 どうして、日本の半導体技術が遅れることとなったのか?それは、政府の業規制の影響とも言われるが、むしろ、日本企業の良さであった長期的投資を行うことをやめ、目先の株価を上げる目的で、短期的な利益優先になった結果だと指摘されている。いつのまにか日本の経営者は、判断が遅く、リスクを取らない経営者となってしまったようだ。これでは国際競争に勝てないのも当然だ。
 これからの半導体メーカーの優勝劣敗を決めるのは、最先端の製造技術を発展させることができるか、否かだ。
 一番でなくてもいいではなく、やはり一番であることが、圧倒的な利益の源泉になるはず。
 建設業としても他山の石として、日本の建設業の高い技術力と優れたマネジメント能力で、最先端産業を支える圧倒的な技術へと進化させたいものだ。

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