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未来の建設業を考える:「製造業に学ぶ設計のありよう」

NC装置大手メーカーのファナックは、あくまで日本での製造にこだわる。なぜか?

 日本の製造業の空洞化が叫ばれて久しい。特に、GDP2位になった中国や電気業界や原子力発電をはじめとする韓国企業の台頭など、日本のたそがれを論じるニュースが年明け早々続いている。完全に日本市場からアジア市場へとシフトしていく世の中で、日本において、NC装置大手メーカーのファナックは、あくまで日本での製造にこだわる。なぜか?

製造現場の意見を取り入れることの重要性

 製造現場がそばにあることで、研究者がすぐにノウハウをフィードバックできる、また、設計においても、製造現場の意見を取り入れることで、概念図に終わらない生産設計を取り入れた設計図、生きた設計図とすることができるからだ。
 NC装置もご多分にもれず、途上国の突き上げが激しい。コスト競争に巻き込まれている。ファナックはコスト競争において、単に製造現場のコストをカットするのではなく、当然ながら、ファナックはその限界を知っているから、設計段階からの見直しによりコスト削減を行う努力を設計者、製造現場、研究者が一体となって行うことで、まさに、生産設計を実現することで、製造コストを下げているのである。

原価に収める努力が設計

 その製造コストそのものの考え方も、建設業のいわゆる積算とは大きく異なる。価格から一定の利益を引いて製造原価を算出し、その原価に収めるのが設計の絶対条件。つまり、cであり、それを実現するのが設計である。積み上げ積算で、コストはいくら、それに現場経費、一般管理費を加えて、合計いくら、といく価格とは、まったく異なるアプローチとなっている。
 そう、ここまで言えばわかるだろうが、建設業では、本当の意味でのコスト競争、生産競争が行われているかと言うと、ファナック的な製造業のロジックを展開できていないのが、今の建設業ではないだろうか。
 受注競争における単純な価格競争による下請けへのしわ寄せでは、建設業界の崩壊につながりかねない。受注価格の競争のみでは、日本の建設業は生きられない。むしろ、日本の建設業としての技術力や品質管理能力を活かして、きちんとした利益を得るべきであろう。

ファナックから学ぶ建設業のありよう

 日本の大手ゼネコンと各国のゼネコンの違いは、強力な設計部門を自社に持つかどうかである。ファナックの強みは、製造コスト低減にあたって、設計者と現場の製造者が協調して設計を具体化してきたことにある。
 日本の大手ゼネコンも、再度、設計と施工の統合による強みを活かして、生産設計の実現や生産プロセスの改革により、本来の価格競争力をつけるべきである。
 山中湖にあるファナックの黄色い建物は周辺の緑と比較して、いささか疑問に感じるところであるが、ファナックが日本の企業の強みとして示した設計と現場のありようは、建設業として、大いに学びたいものである。

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