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高樹のぶ子 ほとほと を読んで

みなさん、こんにちは。高樹のぶ子の「歳時記ものがたり」に収録されている「ほとほと」を読んだ感想を書いていきます。

あらすじです


とある山中の家にひさ代という、若い娘が住んでいました。彼女は半年前に父親を亡くし、一人で孤独に住んでいます。そのうえ、村の女性から疎まれていました。身持ちが悪いという風評のせいもありますが、そんな風評が立つのは、彼女の容姿が良いせいで男たちが何かにつけて噂話の主人公にするとのことです。

別にどうでもいいから

ひさ代はそんな噂を気にせず、気位高く無視してきました。そのせいでますます村の中では孤立してしまいました。彼女は貧乏に耐えながら真っ直ぐ生きる女性でしたが、17歳のとき、村の長老から言い寄られました。

「付き合ってくれや」

「嫌です」

長老の強引な誘いを断って以来、ふしだらな女だという噂が広まってしまいました。要するに、権力者の意向に従わなけば、こういう貶めが待っている。長老も嫌な人です。

ひさ代は父親が生きていたあいだは、孤立しても何とか生活できていました。しかし、家の畑で働く人は全くおらず、彼女だけでの農作業は限界がありました。

そんなある日。見知らぬ人が彼女の家に訪れます。

「天の使いのものです。あなたのお父様のことを知っています」

その男は竹の編み笠が乗り、わら人形のように長い蓑をつけていました。「天の恵みがありますように」など怪しい言葉を言うので、彼女は追い払おうとしましたが、何故か懐かしい心地を覚えました。

父親を知っているから、おそらく村の人だろう

内緒で神様の真似事をして訪ねてやってきたかもしれない。と納得し始め、男を家に入れることにしました。

その後、男は文句を言わずに仕事をこなしている姿に、彼女は男を信頼するようになりました。しかし、その男はどこから来たのか。親は、住んでいるところは、など色々知りたいと思いましたが……

おそらく、この男はどこかで産み落とされたのに違いない。

そう思い、気の毒で聞くことができませんでした。それでも、そういう男こそ、自分にふさわしいと思うようになり、やがて愛するようになりました。

「もう、どこもいかないでください」

「もちろんです、あなたのそばにいます」

という感じで一夜を共に過ごしました。

次の日。彼女が目覚めると、男の姿が消えていました。もう出ていってしまったんだ。と思っていると、頭の上から声がしました。顔を上げて見ると、声は神棚の鏡の中から聞こえてきました。彼女が駆け寄ると、鏡の中で男が照れたように微笑んでいました。

「なるほど、神を装う人間もいますが、人間を装う神もいるんですね」

彼女はすべてを理解し、手を合わせて言います。

「ありがとうございました。また、いつでもいいので私の前に現れて下さい。一緒に過ごして楽しみましょう」

それ以降、彼女の田畑は収穫が実り、彼女自身の女っぷりも増したと言います。


感想です


1月29日の小説講座で課題として上げられたのが、高樹のぶ子さんでした。私自身、彼女の作品は初めてで名前すら、知りませんでした。小説講座では「ポンペイアンレッド」という作品を鑑賞しました。主人公が椅子を買うという、日常生活の一コマから始まり、「秘儀の間」や「火山の噴火」などを連想させる、幻想的な世界に変わる。といった繋げ方と官能的で怪しく、思わず、五感を刺激させるような作品でした。

次の日に図書館にて、高樹のぶ子さんの短篇集を2,3冊借りました。この「ほとほと」という作品も、「ほとほと」という擬音のようなリズム感のある文体が良く、日常生活に神秘的な要素とほっこりするようなオチが面白いと思いました。孤独でも強い女性だが、どこかで寂しい心は残っている。そのような心理描写の細かさは参考になるところもありました。

この作品で言えることは、神棚や仏壇といった、仏さまのことを粗末にしない。と思います。たとえ、魂は亡くなっても、どこかで見守っている。そんな感じでしょうが。


最後まで、読んで頂きありがとうございます。


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