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黒井千次 丸の内を読んで


みなさん、こんにちは。黒井千次の「一日 夢の柵」にある「丸の内」について感想を書いていきます。

あらすじです


 主人公は久しぶりに外出するため、出かける準備をしていました。奥さんはコートがいるぐらい寒いわよというので、主人公は仕方なく箪笥からジャケットを取り出します。そのジャケットは昨年着ておらず、洗濯もしていない、そのままの状態で入っていました。そのジャケットを着て、いきつけの眼鏡屋に行くため、都内へ行きます。

 主人公が駅で電車を待っている際、ジャケットの胸ポケットをさぐっていました。胸ポケットが意外に深く、うっかりとその中に色んなものを入れていた記憶が甦ってきます。そうこうしているうち、一枚の紙片が見つかります。どうやら、紙片には電話番号らしきものが書かれています。しかし、相手の名前もその書かれている文字もわかりません。何かの拍子にメモして、それをメモしたまま、忘れたものに違いないと思い、再びしまいこみます。
近くのゴミ箱に捨てようと考えていたところ、この紙片にメモした当時、このジャケットを着ていたことを、主人公はふと思い出します。そして主人公は、再び紙片を取り出し、電話を掛けてみることを決め、自分の携帯電話ではなく、公衆電話を使って掛けました。プルプルと5回鳴った後、声が聞こえてきます。女の声です。しかし、女はどこにいるのか、名前も不明で、沈黙が続き、電話を切ろうとしません。

 友人のように馴れ馴れしく話す女に、主人公は人違いではないかと言います。それを聞いて女は、建て直されたビルに行けばいいと言って、主人公に対し自分の都合のいいことばかり押し付けます。主人公は腹を立てますが、女は何のために私に電話をかけてきたのか、と逆に質問されます。主人公はただ電話をかけたかった、と素直な気持ちで答えるが、女はあ、そうですか。勝手にしてください、というような捨て台詞を残し、電話が切れます。
結局なんだんだと思いながらも、主人公は目的の眼鏡屋に向かいます。無事にレンズを替え、眼鏡屋の店主から「今日の恰好、決まってますね~」と褒められ、いい気分になり、店を出ます。主人公はテンションが上がり、しばらく都内を歩いていると、あることに気づきます。それはジャケットの胸ポケットにあった、紙片がないのです。
 

 ポケットの中を必死に探しますが、見つからず、あったのは当時使っていたテレホンカードだけ入っていただけでした。主人公は不安を覚えますが、その紙片にかかれていた番号にかけることができなくなるのではないか、という不安ではありません。その紙片そのものがなくなってしまったことに不安を覚えていました。

 主人公は再び来た道を戻り始めますが、ふと思います。紙片があるかないかではなく、女が指定した場所に行けば、そんな不安どうでもいい、と開き直ります。主人公はとうとう、女が指定した場所に辿り着きますが・・・

感想です

ジャケットの胸ポケットに入っていた、一枚の紙片が作り出す物語で、主人公がなかなか眼鏡屋に行くまでに、ジャケットのポケットの描写が多かったです。何気なくジャケットのポケットを探るだけなのに、その一つ動作から仕草、行動、考え、目の前に映る景色などが文の中に盛り込まれて、面白いと思いました。主人公もあれほどどうでもいいやと思っていた紙片が、いざなくなると、不安になって、あたふたします。しかし、再びどうでもいいやと開き直るといった心理描写は、私たちの普段生活しているなかでもあるよね、と共感してしまいます。いつになったら、物語が進むのだ、と焦ってしまう気持ちもあると思いますが、このゆっくりとした時間の経過が、自分の回りに出来事が何かしらあるんだよ、と感じさせてくれます。

例えるとしたら、ジュースが飲みたいという思いから始まり、冷蔵庫からジュースを取り出し、ジュースを飲むまでの終わりといった、一連のプロセスにも色々な出来事が潜んでいます。

ジュースが飲みたい。いや、お菓子も食べたいな。お菓子はどこあったっけ、ときょろきょろしながら近くか、遠くかの引き出しを探しに行ったり・・・

もしくは

ジュースが飲みたい。そういや、○○から連絡が来たんだっけなあ、といい、ポケットまたは目の前のテーブルに置いてあるスマホをいじったり・・・

冷蔵庫からジュースを取り出すまで、自分の周りに起こる出来事など、無限大で数え切れないぐらいあります。ジュースを飲む一連のプロセスまでゆっくりと細かく分析していけば、何かドラマが出来上がりそうですね。

主人公はどうなるか気になる方は、実際読んで見るといいです。私は最後まで読みましたが、こういうオチなんだ。と予測できませんでした。最後のページにいけばいくほど、めくりたい好奇心が出てきました。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

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